孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

モーツァルトの野外フェス!『ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K.482』

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ウィーン・シェーンブルン宮殿

16番以来、モーツァルトのピアノ・コンチェルトを通し番号順に聴いてきました。

いよいよ円熟期に入り、1曲1曲それぞれが、すごい個性と特徴を発揮し、めくるめく世界を現出しています。

モーツァルトばかり書いてきましたが、このまま最後の27番まで進みたいと思います。

クラリネットの登場 

この曲が書かれた1785年後半は、モーツァルト29歳、渾身の大作オペラ『フィガロの結婚』の作曲に没頭していて、他のジャンルの曲はめっきり少なくなっています。

それでも生活のためには日銭も必要で、12月には3回も予約演奏会を開いています。そんな演奏会のために、3か月の間に3曲もピアノ・コンチェルトを作曲しているのですが、この22番はその最初の曲です。

変ホ長調というのは雄大な感じのする調性で、ベートーヴェンのピアノ・コンチェルト『皇帝』やエロイカ(英雄)・シンフォニーもこの調です。

モーツァルトにあっても、変ホ長調の曲は壮大なものが多いのですが、このコンチェルトも、まるでシンフォニーのようなスケールです。

編成も大きいのですが、オーボエの代わりに、クラリネットが2本入っているのが大きな特徴です。クラリネットは、当時オーケストラの中でようやく定席を得始めた新しい楽器で、モーツァルトのお気に入りでした。この曲は、ピアノ・コンチェルトで初めてクラリネットが入った曲なのです。

モーツァルトピアノ協奏曲第22変ホ長調K.482』 

Mozart:Concerto for Piano and Orchestra no.22 in E-flat major , K.482

演奏:ジョン・エリオット・ガーディナー(指揮)

マルコム・ビルソン(フォルテピアノ

イングリッシュ・バロック・ソロイスツ

John Eliot Gardiner , Malcolm Bilson & English Baroque Soloists

第1楽章 アレグロ

始まりの音型は、モーツァルト変ホ長調のスタートによく出てきます。重々しく、威厳に満ちたオーケストラのトゥッティ(全楽器が一斉に奏でる総奏部分)の間に、玉をころがすように歌うピアノ。高音は何ともいえない気品に満ち、低音は脳髄に心地よく響いて、フォルテピアノの魅力を存分に堪能できます。なんという、わくわくするような祝祭空間!何度聴いても飽きることのない、私のお気に入りの楽章です。 

第2楽章 アンダンテ

一転、ハ短調の暗い、悲しい曲になります。高校生の時、これを初めて聴いた時には、『せっかく第1楽章で盛り上がったのに、なぜ水を差すかなぁ…』と感じたのを今でも覚えています。しばらくの間はCDのトラックを飛ばして第3楽章にいっていました。この曲の魅力はコドモには分からなかったのです。笑

暗い部分をしばらく我慢して聴いていると、管楽器たちが、優しく歌い始めます。まるで、森の中で、木洩れ日とともに小鳥が舞い降りて慰めてくれているよう。ダンテの『神曲』冒頭、永遠の憧れの女性ベアトリーチェの死に絶望して、暗い森に迷い込んだダンテを思い起こします。ピアノが男とすれば、管楽器たちの慰めに、時には希望を見出すけれど、やはりどうしても晴れることのない思いが波のように押し寄せ・・・。そんな対話が繰り広げられるのです。やはりこれはオトナの音楽。この世界、実はこの後作曲される第24番でさらに全編に広がります。

この曲の初演のとき、極めて異例なことに、このアンダンテがアンコールされた、とモーツァルトは書いています。ゆっくりとした第2楽章がアンコールされることは無かったようで、明るく、単純な曲が好きな当時の人たちも、この曲の深さには大いに共感したのです。 

第3楽章 アレグロ

ふたたび、祝祭空間に戻ります。スキップするようなピアノに始まり、ホルンがそれを受けます。ホルンは狩りの象徴ですから、この曲は野外演奏のイメージになります。実際、映画『アマデウス』では、宮殿の庭に設けられた、皇帝以下皇族や貴族が居並ぶ野外ステージでこの曲を演奏するシーンがあります。モーツァルト生涯の絶頂期を現し、この後の没落の道をさらに悲劇的なものにしています。

実際にはこの曲の初演は劇場であり、野外で演奏された記録はないのですが。

この楽章でも、第2楽章と同じく中間部で、管楽器がメヌエット風のアンダンティーノ・カンタービレで急にしっとりした歌を歌い始めます。まるで、夏祭りの賑わいを遠くから静かに眺めつつ、去り行く夏の日を惜しむかのようです。 

Mozart: Piano Concerto No.22 In E Flat, K.482 - 1. Allegro - Cadenza: Malcolm Bilson

Mozart: Piano Concerto No.22 In E Flat, K.482 - 1. Allegro - Cadenza: Malcolm Bilson

 

こちらは小編成のスクーンダーエルド版です。

演奏:アーサー・スクーンダーエルド(指揮とフォルテピアノ)&クリストフォリ

Arthur Schoonderwoerd & Cristofori  

第1楽章 アレグロ

第2楽章 アンダンテ

第3楽章 アレグロ

 

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

 

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