孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

どちらを選ぶ?2つの結婚行進曲。メンデルスゾーン『真夏の夜の夢』~古楽器で聴く結婚式の定番曲(7)

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オベロンとティタニアの夫婦ゲンカ

新郎新婦の入場に使われる結婚行進曲には、メンデルスゾーン作曲とワーグナー作曲の2種類があることはよく知られています。

ネットを見ると、どちらを使ったらいいんでしょう??という質問があって、それの回答として、両方とも劇の一場面で使われ、メンデルスゾーンの方はハッピーエンドだけど、ワーグナーの方は悲劇なので、メンデルスゾーンの方をおすすめします、というのがありました。

確かに、ワーグナーの結婚行進曲は、オペラ『ローエングリン』の中の1曲ですが、結婚式のあと、夫婦は仲違いし、周囲のいざこざにも巻き込まれて、最後には花嫁は式の夜に死んでしまう、という縁起でもない結末ではあります。

でもまあ、しょせん作り話ですから、気にすることはないでしょう。

ただ、私の趣味としては、ワーグナーより断然メンデルスゾーンの方が好きですが。

ワーグナーのものはこちら。古楽器ではありません。 

クラシックのジャンル分けとは

メンデルスゾーンは、これまでご紹介してきた作曲家の中で一番新しく、〝ロマン派〟に属します。ただ、このあたりの音楽のジャンル分けは、他の芸術分野の分け方を援用した、単なる時代区分の性格が強いです。

時代で分けると下記のようになります。

バロック 17世紀から18世紀前半

【古典派】 18世紀後半から19世紀初頭

【ロマン派】 19世紀

ですので、〝派〟といっても、何か特定の主義主張に基づいて創作を行ったわけではないのです。〝昭和歌謡曲〟のように、そんな時代だった、というくらいのとらえ方でよいと思います。

というわけで、メンデルスゾーンなどは古典派の影響が大きく、こうしたロマン派初期の曲には古楽器の演奏もたくさんあるのです。

裕福な天才、メンデルスゾーン

さて、メンデルスゾーンは1809年にドイツ・ハンブルクで生まれました。家はユダヤ系でしたが、父アブラハムの代にキリスト教に改宗しています。銀行家の家系だったので、家庭は非常に裕福でした。メンデルスゾーンは幼い頃からモーツァルト並みの神童ぶりを発揮し、12歳から14歳で作曲した12曲の弦楽シンフォニーは素晴らしく楽しい曲です。

これもモーツァルト同様、38歳の短い生涯でしたが、クラシックの定番〝メンコン〟すなわちヴァイオリン・コンチェルトをはじめ、シンフォニー〝イタリア〟〝スコットランドなど、数々の名曲を生み出しています。さらに、音楽界に残した業績の大きく、特に20歳のとき行ったバッハの『マタイ受難曲』の復活上演は、死後しばらく評価が限定的だったバッハの偉大さを再発見させたということで、音楽史の画期と言われています。

真夏の夜の夢

メンデルスゾーンの結婚行進曲は、劇付随音楽『真夏の夜の夢』の中の1曲です。

これは、同名(『夏の夜の夢』とも)のシェイクスピアの戯曲につけられた音楽です。

内容は、幻想的なおとぎ話で、人間や妖精、神話の中の何組ものカップルがドタバタを演じます。

森の中では妖精の王オベロンと、妖精の女王(フェアリー・クィーン)ティタニアが養子をめぐって夫婦ゲンカをし、頭にきたオベロンはティタニアが寝ている間に、いらずら妖精パックに銘じて、そのまぶたに目を覚まして最初に見たものに恋してしまう媚薬を塗らせ、目覚めたティタニアはロバの頭をした男に惚れてしまい・・・。ほかにも、魔法のせいでいろんな恋のから騒ぎが起こりますが、最後には魔法が解けて、みんな元さやに収まってめでたし、めでたし・・・というような内容です。 

まるでジブリの世界ですが、昔からみんなこういうおとぎ話が好きだったのですね。

いや、エルフやドワーフが出てくる話なので、ジブリがこの世界を現代に再現したわけですが。

このような雰囲気たっぷりの幻想的な音楽ですが、何より序曲が素晴らしいのです!

序曲が出来たのは早く、1826年、メンデルスゾーン17の時ですが、ピアニストだった姉のファニーとのピアノ連弾用にこの序曲を作曲し、すぐにオーケストラ用に編曲しました。

これが完璧な出来で、後年、1843年になって、序曲を聴いてすっかり気に入ってしまったプロイセンフリードリヒ・ヴィルヘルム4世にねだられて、劇の中の曲を作ってくれと命じられて書いたのが、結婚行進曲を含む、劇付随音楽になります。

メンデルスゾーン真夏の夜の夢』作品61

Felix Mendelssohn : Midsummer Night’s Dream OP.61

演奏:フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮シャンゼリゼ管弦楽団

Orchestre des Champs-Elysees & Philippe Herreweghe

序曲

神秘的な管楽器の和音から始まり、森の妖精たちがあやしくざわめきはじめます。そして、一気に幕が上がり、奔馬が駆け回ったかと思うと、恋人たちの甘いささやきが聞こえてきたり、妖精の王様が威風堂々と登場したりと、めくるめくような夢物語が繰り広げられます。  

第7曲 結婚行進曲

ゼクシィの〝パパパパーンの曲〟としての方が、今では馴染みがあるかもしれません。結婚式ときいてまず頭に浮かぶ曲でしょう。でも、昭和の盛大な披露宴を思わせ、〝地味婚〟が多い昨今では、大げさすぎる、いかにもという感じでイヤ、と敬遠されているかもしれません。でも聴くと、ひとそれぞれ、いろんな思いが胸に浮かぶ曲のはずです。  

I. Ouvertüre

I. Ouvertüre

 

 

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オベロンとティタニアの和解

ワーグナーの悲劇に比べればハッピーエンドではありますが、夫婦ゲンカはかなりこじれて周囲に大変な迷惑をかける話ですから、これも結婚式にふさわしい物語といえるかどうかですが・・・。

まあ、ケンカと和解を繰り返して絆が深まるのが夫婦、ということであれば、こちらの方が現実的かもしれませんね。笑

 

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

 

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