孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

夫に浮気され、美少年に恋され。フィガロの結婚(8)『恋とはどんなものかしら』

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ケルビーノのアリエッタ『恋とはどんなものかしら』

フィガロの結婚』第2幕第1場

第2幕の舞台は、伯爵夫人ロジーナの豪華な私室。天蓋つきの豪華なベッドがあり、ドアが3つ。ふたつは廊下、ひとつは衣装部屋に続いています。

幕が開くと、初登場の伯爵夫人が窓辺に佇み、物思いに沈んでいます。

そして、夫の愛が冷めた悲しさを静かに歌いますが、短いながら、古今東西のオペラの曲の中でも特に美しいといわれている歌です。

憂愁の貴婦人。高貴な色香が匂い立つようです。

 第10曲 伯爵夫人のカヴァティーナ『愛の神様』

愛の神様、私の苦しみとため息に、安らぎを与えてください

あの方を私に返してください

さもなければ、せめて私に死をお与えください

歌い終わると、スザンナが入ってきます。

レチタティーヴォ

伯爵夫人

スザンナ、来て話の続きを聞かせて。

スザンナ

もう全部お話しましたわ

伯爵夫人

あの人はあなたを誘惑しようとしたのね。

スザンナ

いいえ、私のような女にはそんな面倒なことはなさいません。

お金で片付けようというわけですの。

伯爵夫人

ひどい人。もう私を愛していないのね。

スザンナ

ではどうして、奥様にはあんなにヤキモチを焼かれるのでしょう?

伯爵夫人

夫たちはみんな、生まれつき浮気者よ。

そのくせプライドが高いから、嫉妬深いの。

でも、あなたのフィガロは違うわよね?

伯爵夫人が実に耳に痛いことを述べたあと、フィガロが陽気に入ってきます。

そして、伯爵のたくらみのウラをかく作戦をふたつ、提言します。

まず、伯爵の時間稼ぎへの対抗策

『伯爵夫人が、結婚式の舞踏会の最中に、愛人と密会する』という怪情報をリークした匿名の手紙を、バジリオを通じて伯爵の手に渡るようにし、伯爵がそれにカーッとしてスザンナどころではなくなるようにして、結婚式にこぎつける。

次に、伯爵の浮気癖をこらしめる策

スザンナは伯爵から、夜、庭にくるよう執拗に言われているが、ウソの承諾をしておく。そして、即刻連隊に行くよう命令されたケルビーノをひそかにとどめておき、女装させて、スザンナの代わりに庭で逢引させる。その現場を伯爵夫人が取り押さえる。

伯爵夫人は、あまりに大胆な作戦に、そんなことをして大丈夫かしら、と不安がりますが、結局、やってみることになります。

フィガロの結婚』第2幕第2場

そして、フィガロは手紙作戦のために出て行き、フィガロに言われたケルビーノが入室してきます。

ケルビーノは、憧れの伯爵夫人の前でガチガチになっています。

スザンナはそんなケルビーノに、朝言っていた自作のラブソングを、奥様の前で歌ったら、とからかいます。

伯爵夫人も興味をもち、あら、ぜひ聴かせてほしいわ、とうながします。

ケルビーノは、緊張の極限ですが、奥様がお望みなら・・・と歌います。

そして、スザンナのギターの伴奏で歌うのが、有名な『恋とはどんなものかしら』です。誰もがご存知の旋律です。

第11曲 ケルビーノのアリエッタ『恋とはどんなものかしら』

恋とはどんなものか、知っておられるご婦人がた

どうか教えてください、私は恋していますか

私が感じていることをお話しします

初めてのことなので、私には分からないのです

私の心の中は、憧れの気持ちでいっぱいです

それは、喜びでもあり、苦しみでもあるのです

凍ったかと思えば、火のように燃え上がり

またあっという間に冷えてしまいます

私は幸せが欲しいのですが

幸せって何でしょう

そして誰が持っているのでしょう

自然とため息が出るし、理由もなく胸が高鳴ります

夜も、昼も、心は落ち着きません

でも、こんな悩みも、嫌ではないのです

恋とはどんなものか、知っておられるご婦人がた

どうか教えてください、私は恋していますか

弦のピチカートがスザンナのつまびくギターを表し、管楽器のオブリガートが、ふわふわと舞う少年の恋心を表現します。花から花へ、女性から女性へと移ろう蝶々のように。

まさに、季節は春。

源氏物語でいう、花を踏んでは同じく惜しむ少年の春、です。

軍隊行きの決まったケルビーノ。

憧れの伯爵夫人に会えなくなるばかりか、戦争になれば命を落とすかもしれません。

歌詞を書いていた頃よりも状況は切迫していますから、歌には本人もコントロールしきれない、夫人へ切実な思いが込められています。

歌が終わると伯爵夫人は、素敵な声ね、あなたがこんなに歌が上手だとは知らなかったわ・・・、と型通りにほめますが、少なからず心を動かされた様子。

自身、夫との関係で悩んでいる最中に、幼いけれど、恋の初心を思い出させるような素朴な歌は、思いがけず、夫人の傷ついた心に沁みたのでしょう。

相当に年の離れたふたり。

何もあるはずはないのですが、少しあやしげな雰囲気も漂わせつつ、次回へ。

 

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