孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

幸せだったあの日々は。フィガロの結婚(16)『どこに行ったのかしら』

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フィガロの結婚』第3幕第7場

全員退場したあと、アントニオの娘バルバリーナが、ケルビーノを連れて現れます。

窓から飛び降りて逃げたケルビーノは、バルバリーナにつかまっていたのです。

バルバリーナはケルビーノが好きで、奥様のものに娘たちでお花を捧げに行くから、自分の部屋で娘の恰好をして一緒に行こう、と引っ張っています。

ケルビーノは、今度こそ伯爵に見つかったら…と渋っていますが、バルバリーナの強引さに逆らえず、そのまま引かれていってしまいます。

バルバリーナにまかせなさい、と、ナゾの自信ですが、その根拠は後にわかります。

フィガロの結婚』第3幕第8場

裁判の結果、事態が変転しているのを知らない伯爵夫人。

スザンナからまだ何の知らせがないのを不安がり、独りで物思いにふけっています。

そしてアリアを歌います。

これは、先に歌われたアルマヴィーヴァ伯爵のアリアと対になっており、夫の愛が冷めたことを歌う第2幕の冒頭のカヴァティーナを、さらに本格的にした、感動的なアリアです。

第19曲 伯爵夫人のレチタティーヴォとアリア『スザンナはまだかしら~あの喜びはどこに』

伯爵夫人

レチタティーヴォ・アコンパニャート

スザンナはまだかしら。

スザンナの申し出に、伯爵はどう答えたのかしら。

あの嫉妬深い夫にはこの計画は大胆すぎたかもしれないけど…

でも、悪いことじゃないわ。

私がスザンナの服を着て、闇の中で…

ああ、でもなんでこんなことまでしなければならないの…

あのひどい夫のせいで・・・!

あの人は、不義と、嫉妬と、侮辱を織り交ぜて、

初めは私を愛し、次には軽んじて、ついには裏切ったのよ…

そしてついには、召使いの力まで借りなければならないなんて…

(アリア)

どこに行ったのかしら

あの甘く楽しい日々は。

どこに消えたのかしら

あの嘘つきの口が誓った言葉は。

すべてが涙と悲しみに変わってしまっても

あの幸せな思い出が胸から消えないのはなぜ?

ああ、でも、一途にひたすら愛し続ければ

あの人が心を変えてくれる望みもあるかもしれない。

夫の愛が冷めたのを嘆く妻の気持ち。

幸せが永遠に続くと思っていたのに、いつの間にか涙にくれる日々になってしまった。

それでも、あの頃の幸せな思い出は胸から消えることはない。

モーツァルトの音楽は、この孤独な女性の心の声を、劇場に満ちた聴衆たちに伝えていきます。

切々と、心に沁み入る旋律です。

そして歌の最後、自分の誠意があの人の心を変えてくれるかも、という、一縷の望みを歌う時、明るい希望の光が差します。

人は、希望がなくては生きていけません。

それがたとえ、叶う見込みの薄いものであっても。

その希望にすがる伯爵夫人の歌は、実際の舞台で聴くと、全劇場が震えるような感動に包まれます。

私もこの部分では涙を抑えることができません。

伯爵の男の理屈のアリアに共感しつつも、女性のこの深い気持ちには勝てないのです。

テノールやバスも魅力的なのですが、女性が思いを込めて歌うソプラノには、電撃に打たれたような抗いがたい力があります。

 

クルレンツィス版はこちら。

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