前回に引き続き、グレン・グールド弾くバッハのパルティータ、今回は第3番と第4番のご紹介です。
アルバムでは4番が先になっていますが、曲番通りご紹介します。
バッハ『パルティータ 第3番 イ短調 BWV827』
J.S.Bach :Partita no.3 in A minor, BWV827
演奏:グレン・グールド(ピアノ) Glenn Gould
【トラック 8~14】
第1曲ファンタジア。幻想曲と訳されますが、バッハの場合はショパンのそれなどとは違い、あまり自由な感じはせず、しっかりした構成になっています。非常に美しい曲です。
第2曲アルマンド。踊りの曲でありながら、室内的な繊細さを見せる曲です。
第3曲コレンテ。荘重な付点リズムでありながら、軽妙な曲に仕上がっています。
第4曲サラバンド。通常のサラバンドの違い、重々しさを感じさせず、軽い感じさえします。合図を鳴らすような音型が印象的です。
第5曲ブルレスカ。ブルレスカとは、冗談とか、洒落とかいう意味ですが、あまりそういった性格は感じられません。むしろメヌエットに近い気品ある曲です。
第6曲スケルツォ。ベートーヴェンがシンフォニーでメヌエットの代わりに第3楽章で導入して有名になったスケルツォですが、それとの比較はまだこの段階ではできません。しかし、他の楽章より劇的な要素が見受けられ、それがベートーヴェンまでつながっていると考えると、山奥で大河の源流を見つけたような気分になります。
第7曲ジーグ。3声のフーガで書かれた、バッハに典型的なフーガです。感情があふれるようなドラマチックな音楽です。
バッハ『パルティータ 第4番 ニ長調 BWV828』
J.S.Bach : Partita no.4 in D major, BWV828
演奏:グレン・グールド(ピアノ) Glenn Gould
【トラック 1~7】
第1番ウヴェルチュール(序曲)。パルティータは全体的にはイタリア風の香りがしますが、ここでは思いっきりフランス風序曲が置かれています。緩-急の壮大な序曲です。王を迎えた祝典の始まりを思わせます。
第2番アルマンド。管弦楽組曲第3番の、序曲の後に続くG線上のアリアを思わせる、優艶な曲です。
第3番クーラント。思わずうなってしまうような美しい旋律が、気高く響く素敵な曲です。
第4番アリア。バッハの代表作『マタイ受難曲』のアリア『わがイエスを返せ』を思わせます。しかし、ここでは、イエスを売ったユダに対する怒りのようなものはなく、軽妙な歌になっています。
第5番サラバンド。舞曲というもとの性格を離れ、ゆっくりした、コンチェルトの緩徐楽章のような味わいの曲になっています。
第6曲メヌエット。きらびやかで輝かしく、そして優しい舞曲です。
第7曲ジーグ。どこで切れるか分からない、無窮動的なテーマが華麗に展開する終曲です。これはまさにイタリア風であり、フランス風序曲で始まるこの曲は、両国のいいとこどりをしてやった、というドイツ人の誇らしげな顔が見えるように思えるのです。
パルティータのチェンバロ演奏もご紹介します。
バッハ『パルティータ 全曲』
演奏:トレヴァー・ピノック(チェンバロ)Trevor Pinnock
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