孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

ロンドンの地下鉄での思い出。バッハ『無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ 第3番』

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ケーテン時代のバッハ

唯一の長調

無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータの最後の曲、第3番です。

唯一、長調の明るい曲ですが、深みはこれまでの短調曲に劣りません。

ソナタ第3番のフーガ、パルティータのプレリュード、ガヴォットなどが聴きどころです。

さっそく聴いていきましょう。

バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005

J.S.Bach : Sonata for Violin Solo no.3 in C major, BWV1005

演奏:ジギスヴァルト・クイケン(ジョヴァンニ・グランチーノ製バロック・ヴァイオリン使用/1700年頃ミラノ

Sigiswald Kuijken

第1楽章 アダージョ

ゆりかごのように、ゆったりとたゆたうリズムで始まります。だんだんとメロディラインは上昇し、和音が重なっていきます。全3曲に共通することですが、ソナタは〝教会ソナタ〟ですので、教会で演奏された可能性もあります。次の楽章のテーマには聖霊降誕祭用のコラールが使われていますので、その前奏曲として、クリスマス・オラトリオの第2部のように、イエスのゆりかごがイメージされているのかもしれません。

www.classic-suganne.com

第2楽章 フーガ

354小節に及ぶ長大なフーガで、前述のように、テーマは古いコラール『来たれ、聖霊よ、主なる神よ』から取られています。教会の礼拝時に無伴奏曲が演奏された、という伝承も残っており、実際に教会で奏でられた可能性があります。石の聖堂に響く1台のヴァイオリン。それはどれだけ厳粛で魂を揺さぶられるものだったでしょうか。カトリックにおける単旋律のグレゴリオ聖歌のような効果があったと思われます。フーガは厳格な様式を取っており、後半はテーマを裏返す〝逆向き〟の指示があり、また新しい展開が始まります。

第3楽章 ラルゴ

短い楽章ですが、例によって1台二役で、通奏低音の役割も与えられています。自分で自分の伴奏をしているわけです。抒情豊かなラルゴです。

第4楽章 アレグロ・アッサイ

ワクワクするような素敵な楽章です。世俗的な香りもしますが、教会で演奏されたときには、神から許しを与えられた悦びのように響くことでしょう。幸せな気分に満たされます。

バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第3番 ホ長調 BWV1006

J.S.Bach : Partita for Violin Solo no.3 in E major, BWV1006

第1楽章 プレリュード

天から天使が舞い降りたような、きらめく輝かしさをもった曲です。27年程前、大学生のときに初めてヨーロッパを訪れた際、ロンドンの地下鉄の駅の通路で、ひとりの女性がこの曲を奏でているのに出会いました。地下通路はまるで大聖堂のような音響効果で、しかもヴァイオリン1台とは思えない充実した響きですから、息をのむ思いで聴き入りました。彼女の目の前に立つ勇気はなく、曲がり角に身を隠して。さすがヨーロッパ、クラシックが日常に生きているんだ、と、涙が出るほど感動しました。そして、去りがけにヴァイオリン・ケースにコインを入れたのですが、恥ずかしくて彼女の目も見れなかったのを覚えています。この曲を聴くと、初めて訪れたヨーロッパの感動が蘇ります。 

第2楽章 ルール

フランスのノルマンディー地方に起源をもつといわれる、のどかな舞曲です。深呼吸をするかのような、のびのびとした楽想です。

第3楽章 ガヴォット・アン・ロンド―

ヴァイオリン教室の発表会でも独立して演奏される有名な曲です。冒頭のテーマに、いくつもの違った旋律がサンドイッチのように挟まれる、ロンド形式をとっています。

第4楽章 メヌエット

ふたつの性格の異なったメヌエットが組み合わされ、最後には最初のメヌエットに戻ります。

第5楽章 ブーレー

力強くも華やかな舞曲です。ここでは、第2番と違ってフランス語で表記されています。

第6楽章 ジーグ

全曲のブーレ―に続き、軽快で速い舞曲です。素早い動きに目くるめく思いをしている間に、サッと幕が下りる、粋なフィナーレです。

 

以上で、バッハの不朽の名作、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータは終わります。

ピアノは1台でも、フル・オーケストラに匹敵する音楽を創造できますが、ヴァイオリンでもそれができるぞ、というバッハの野心がギラギラした曲です。

しかし、虚空に響くヴァイオリンの音は、さまよう孤高の魂のように心を打ちます。

いつでも気軽に聴ける曲ではないのですが、いざというときに、人生の支えとなってくれる音楽と思うのです。

 

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