孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

心癒される、フルートとチェンバロのマリアージュ。バッハ『フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ 』

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典雅なオブリガートチェンバロ

バッハ無伴奏を聴いてきましたが、あまりに深遠だったので、そろそろお口直しといこうと思います。

前回は無伴奏フルート・パルティータでしたが、バッハのフルート曲には、伴奏付きのものと、オブリガート・クラヴィーア(チェンバロ)つきのものがあります。

両方ともチェンバロがパートナーなのですが、どう違うかというと、伴奏の方はあくまでもフルートの独奏に和音を充填する通奏低音つきであり、オブリガート(助奏)は、チェンバロも主役のひとりということです。

もっと言えば、フルート、チェンバロの左手、右手の三者が対等に演奏する曲、ということです。独奏曲でもなく、二重奏曲でもなく、いわば三重奏曲といえます。

これはバッハの発明なのです。

それだけに、響きも華やかで、充実したものになります。無伴奏を聴いてきた耳には、チェンバロが加わるだけで、何とも贅沢に聞えて、ドイツ的節約が身についた気が気がします。笑

バッハのオブリガートチェンバロつきのフルートソナタは、ロ短調変ホ長調イ長調の3曲伝えられているのですが、変ホ長調は良い曲ながら、現代の研究では大バッハの作ではないとされていますので、ここでは残り2曲を聴きます。

バッハ:フルートとチェンバロのためのソナタ ロ短調 BWV1030

J.S.Bach : Sonata for Flute & Cembalo in H minor, BWV1030

演奏:マルク・アンタイ(フラウト・トラヴェルソ)、ピエール・アンタイ(チェンバロ

Marc & Pierre Hantai

第1楽章 アンダンテ

バッハのフルート・ソナタの中でも最も有名で、傑作と言われています。バッハのつけた原題は『J.S.バッハチェンバロオブリガートと独奏横フルートのためのソナタ』でした。チェンバロが華やかに活躍する上に、バッハの宿命的な調性、ロ短調でフルートが典雅に歌います。チェンバロは時には伴奏に徹してフルートを引き立たせ、時には前に出て歌うさまは、まるでコンチェルトを聴いているような充実ぶりです。フルートとチェンバロ、またチェンバロの左手と右手が、それぞれカノンのように模倣し合うところも聴きどころです。

第2楽章 ラルゴ・エ・ドルチェ

わざわざドルチェ(甘く)と指示があるように、チェンバロの宝石のように美しい和音の上に、フルートが優しく奏でるメロディには、心がゆったりと癒されます。

第3楽章 プレスト

前半はフーガ、後半はアレグロのジーグ、という凝った構成です。フーガは3声で、まずフルートがテーマを提示し、チェンバロの右手、左手と続きます。長めの間奏のあと、活発なジーグに移りますが、これも、流れるようなイタリア風のジーグと、付点リズムのフランス風ジーグが巧みに組み合わされた、高度なものです。まさに、バッハはそれまでのヨーロッパ各国の音楽が流れ込んだ海、ということを示した曲です。

バッハ:フルートとチェンバロのためのソナタ イ長調 BWV1032

J.S.Bach : Sonata for Flute & Cembalo in A major, BWV1032

演奏:マルク・アンタイ(フラウト・トラヴェルソ)、ピエール・アンタイ(チェンバロ

Marc & Pierre Hantai

第1楽章 ヴィヴァーチェ

この楽章は、残念ながら後半が失われているのですが、それもバッハの〝節約〟のせいなのです。

バッハは、紙に19段の五線を引いて使ったのですが、『2台のチェンバロのためのコンチェルト ハ短調 BWV1062』を書いているとき、このコンチェルトでは上から16段しか使いません。下の残り3段が〝もったいない〟ということで、このソナタの楽章を書いたのです。そして、上の段のコンチェルトが終わってから、ようやく紙全面をこの楽章に使いました。ところが、後世誰かが、下半分を切断しました。違う曲なのですから、分からないでもありません。でも、その部分だけが残り、全面の部分、つまり後半はどこかにいってしまい、失われたのです。バッハ先生、ドイツ人ならではの徹底したエコ精神は素晴らしいですが、いくらなんでもケチすぎます…。

しかしながら、この曲の素晴らしいこと!チェンバロから始まり、フルートが満を持して登場しますが、まさにコンチェルトの趣きです。バッハのイ長調は朝の風のようにさわやかで、大好きです。

第2楽章 ラルゴ・エ・ドルチェ

この曲にもドルチェ(甘く)と指示があり、その通り、しっとりとした甘美なメロディにうっとりとします。フルートとチェンバロは時に役割を交代しながら、優雅な時間を紡いでいきます。

第3楽章 アレグロ

幸せいっぱいの素敵な終楽章です。フルートとチェンバロは完全一体となり、ハーモニーを響かせています。まさに楽器同士のマリアージュと言えるでしょう。 このソナタは3楽章構成になっていますが、4楽章構成のバロックの教会ソナタから、次の時代の3楽章ソナタへの橋渡しの曲ともいえます。

Apple Musicのデータの速度表記は誤りで、第1楽章と第3楽章が逆になってしまってます。

 

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