孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

貴婦人失神!いわくつきのシンフォニー。ハイドン『交響曲 第100番 ト長調〝軍隊〟』

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ヨーロッパで流行ったトルコ趣味

ハイドンの第2期ザロモン・セットの2曲目は、シンフォニー第100番〝軍隊〟です。

キリ番でもありますが、この曲は〝驚愕〟〝時計〟と並んで、もっともポピュラーで、人気のある曲です。

私も最初にこの曲を聴いてハイドンのとりこになりました。この頃の作の中でも、最も大衆受けを狙った、悪く言えば俗っぽい曲なのですが、それだけに底抜けに楽しく、何度聴いても飽きない曲です。

ハイドンのシンフォニーの愛称は、ほとんど後からつけられたものですが、この曲だけは、ザロモン・コンサートの新聞広告にすでに〝Military Symphony(軍隊交響曲〟として予告されていました。

それは、曲に軍楽の要素が盛り込まれていたことによります。トランペットに加え、通常オーケストラには入らない大太鼓、シンバル、トライアングルといったパーカッションが入っているのです。

しかも、その軍隊はヨーロッパのものではなく、トルコの軍楽隊をイメージしたものでした。

オスマン・トルコ帝国はこの時代にはすでに衰退期にありましたが、その最盛期にはハンガリーを蹂躙し、二度にわたってウィーンを包囲するなど、長い間ヨーロッパを脅かしてきました。

トルコをやっつけろ、食べてしまえ、ということで、ウィーンでトルコの旗の三日月を模したパン、すなわちクロワッサンが焼かれたのは有名な話です。

一方で、そのエキゾチックな文化はヨーロッパで一種の流行をもたらし、トルコ風の音楽も人気でした。

モーツァルトはオペラ『後宮よりの逃走』やピアノ・ソナタの『トルコ行進曲』を作曲しましたし、ベートーヴェンにも『トルコ行進曲』はあります。

ハイドンのこの曲も大きなインパクトを与え、第2楽章では轟く大太鼓の迫力に、貴婦人が失神した、という記録も残っています。

ハイドン交響曲 第100番 ト長調 Hob.Ⅰ:100〝軍隊〟  

F.J.Haydn : Symphony no.100 in G major, Hob.Ⅰ:100 “Military”

クリストファー・ホグウッド指揮アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック

Christopher Hogwood & Academy of Ancient Music

 

第1楽章 アダージョーヴィヴァーチェ・アッサイ

序奏は、すっきり、ゆっくりとした感じでさりげなく始まり、次いで、短調に移り、次第に重々しくなっていきます。緊張が極に達したところで主部に移りますが、唐突にフルートのお気楽なメロディで始まるのには意表をつかれます。これはハイドンの他の曲にも例がありません。次いで弦が遊園地のアトラクションのように愉快な動きを見せ、盛り上げていきます。第2主題も弦が楽しくざわめく中、管楽器が遊んでいきます。提示部が終わると、ひと呼吸置いてから展開部が始まるのも、ユーモアたっぷりです。メロディは何か歌詞をつけたくなるような親しみやすいものです。最後はハイドン先生、やけくそになっているの?と思うような無理矢理な盛り上げ方で幕となります。

第2楽章 アレグレット

この曲のテーマは、ナポリ王のためにつくられたリラという今は滅びた楽器のためのコンチェルトからとられました。トライアングル、シンバル、大太鼓が加わり、トルコの軍楽隊風の迫力ある、第2楽章らしからぬ音楽が繰り広げられます。最後は、トランペットによる有名な軍隊の信号ラッパが吹き鳴らされ、大軍が突撃してくるような大音量が鳴らされるので、貴婦人が失神したのも無理はありません。オーケストラに大砲を持ち込んだチャイコフスキーほど無茶ではありませんが…。

第3楽章 メヌエットモデラー

数あるハイドンメヌエットの中でも、最もポピュラーかもしれません。遊園地のメリーゴーランドのように楽しく回ります。トリオではフルートとオーボエが活躍します。

第4楽章フィナーレ:プレスト

ザロモン・セットの中でも特に充実したフィナーレです。スキップするような軽やかなテーマですが、進むにつれ、高度に展開し、迫力を増していきます。途中、最後の盛り上がりのフレーズを予告する手法も、後進をうならせたことでしょう。もったいぶるように、焦らして、焦らして、焦らした末に、最後にはパーカッションが加わって爆発します。

当時の家庭で楽しむ、ハイドンのシンフォニー

このようなハイドンのシンフォニーは、ロンドンで大評判となりましたが、実際にコンサートで聴ける人はほんの一握りでした。今のようにCDがあるわけではありませんので。しかし、ハイドンをロンドンに招いたザロモンは、今でいう秋元康のような名プロデューサーでした。

ハイドンから新作シンフォニーの著作権、版権も買っていましたので、それを使って、弦楽四重奏にピアノ、フルートを加えて演奏できるよう編曲し、その楽譜を売り出したのです。

つまり、ハイドンのシンフォニーをご家庭で、というわけです。

楽譜はもちろん、飛ぶように売れました。ハイドンのシンフォニーは、オーケストラによる演奏より、むしろこのような編曲版の方で、多くの人々に親しまれたわけです。

ザロモンによる編曲版の演奏はこちらです。当時の人の多くが耳にした響きをお楽しみください。

ハイドン交響曲 第100番 変ホ長調 (ザロモン編曲版)

F.J.Haydn (arr.Salomon) : Symphony no.100 in G major, Hob.Ⅰ:100

演奏:ザロモン四重奏団、リーザ・ベズノシューク(フルート)、クリストファー・ホグウッドフォルテピアノ

第1楽章 アダージョーヴィヴァーチェ・アッサイ

第2楽章 アレグレット

第3楽章 メヌエットモデラー

第4楽章フィナーレ:プレスト

 

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