孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

フランス音楽の最も美しい1ページ。ラモー『新クラヴサン組曲集 第1番(第4組曲)』〝サラバンド〟〝ガヴォットと変奏〟~ベルばら音楽(20)

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ジャン=シメオン・シャルダン『音楽のアトリビュート

新しく斬新な試み

ジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764)のクラヴサンのシリーズ、今回は第4組曲です。

パリ生活が軌道に乗りつつあった1728年に出版された『クラヴサン組曲』のふたつの組曲のうち、第1番になります。

わざわざ題名に〝新〟をつけているだけあって、これまでの作品とは一線も二線も画した意欲作です。

組曲の形式にこだわらず、標題をもった曲も混ぜ込むなどは、クープランの方が先にやっていたことではありますが、その響きの斬新さは、さすがハーモニーの研究に一生をかけたラモーならではです。

当時としては聴き慣れないコード進行だったわけですが、今の耳には実に現代的に聞こえてくるのです。

全7曲で構成されており、冒頭は、アルマンドクーラントサラバンド、という定石通りの配列ですが、そのあといくつかの標題曲が続き、最後はかなり激しい変奏曲で締めくくられる、という異色の組曲です。

1曲、1曲、まるで物語のページをめくるような思いがします。

特に3曲目の『サラバンド』は、フランス音楽の最も美しい1ページだと思っています。

それでは聴いていきましょう。

ラモー:新クラヴサン組曲集 第1番(第4組曲 イ短調イ長調

Jean-Philippe Rameau:Nouvelles suites de pièces de clavecin : Suite in A Minor - major

演奏:ジョエル・ポンテ(クラヴサン)Joël Pontet

第1曲 アルマンド

組曲の冒頭によく置かれる舞曲、アルマンドですが、この曲は前座のような軽いものではなく、長大な序曲のように充実したものです。

3声の荘重なリズムをもったメロディが、右手と左手で呼び交わされて、時にはふと切ないほど甘美な表情をみせます。

第2曲 クーラント

ルイ14世も好んで踊ったというクーラントは、舞曲の中でも格式が高いとされていますが、ラモーのこの曲はフランスのものとしては倍くらいの速さになっています。

イタリアではコッレンテと呼ばれ、フランスのクーラントより速いのですが、この曲は別にイタリア風に書かれたというわけではなく、装飾のアルペッジョなどはフランスの香りたっぷりです。

第3曲 サラバンド

いよいよ、私の思うフランス最高の曲、サラバンドです。

前2曲の厳しいイ短調から一転、やわらかな日差しの差すようなイ長調です。

美しいアルペッジョが両手で呼び交わされながら、溢れる思いを静かに語るかのようです。

中間部で、真剣にたたみかけるようなパッセージを見せつつ、再び愛情のこもったまなざしになっていきます。

音楽による愛の告白、と言ったらいいでしょうか。

コーダは胸がいっぱいになりますが、この演奏のように、もう一度繰り返すのが私はとても好きです。

しかし、繰り返さない演奏の方がはるかに多いので、元の楽譜にはない、演奏者の即興なのかもしれませんが。

 

ロベール=ヴェイロン・ラクロワの往年の名演奏も掲げておきます。

こちらは新進気鋭のチェンバロ奏者、ジャン・ロンド―の演奏です。


Jean Rondeau - Jean-Philippe Rameau - Nouvelles Suites de Pièces de clavecin (1727)

第4曲 3つの手

音楽学者ラモーらしい、実験的な趣きの曲です。

低音を担当する左手が、右手を追い越して高音を弾いたり、逆に右手がバスを弾いたりして、手が3つあるのでは!?と思わせる効果を狙っています。

高い音と低い音がめまぐるしく変わるのが聴きどころです。

第5曲 小さなファンファーレ

冒頭の音型はトランペットのパンパカパーン、というファンファーレを模していますが、すぐに優しいフレーズに移っていきます。

実は、小さなファンファーレとは、おしゃべりな女の子を指しているのです。

第6曲 凱旋

前の曲に導入され、勝利を収めた将軍が、大衆の歓呼を受けながら帰還してくるイメージですが、これも〝勝ち誇った女〟を指す、という解釈もあります。

後半の展開部では、びっくりするような転調と変わった和音が出てきて度肝を抜かれますが、これは戦いの回想なのでしょうか。

第7曲 ガヴォットと6つの変奏(ガヴォット)

シンプルなガヴォットに、6つのドゥーブル(変奏)が続きます。

その単純さゆえに、ストレートに心に響く魅力的な音楽で、ラモーの中でも特に好きな曲です。

同じバロックの変奏曲といっても、バスの定型メロディを維持するものの、元の旋律とはかけ離れて展開していくバッハの『ゴルトベルグ変奏曲』とは違い、主たるメロディが様々に展開していくスタンダードなタイプで、ヘンデルの『調子の良い鍛冶屋』に近い形です。

特に第5変奏、第6変奏は現代的で、激しく情熱的です。

第1変奏

第2変奏

第3変奏

第4変奏

第5変奏

第6変奏

ピノックの素晴らしい演奏も掲げておきます。

 

次回は、新クラヴサン組曲第2番です。

 

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

 

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