孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

嵐のようなヴァイオリン。ヴィヴァルディ:協奏曲集『和声と創意への試み 作品8』より第5番『海の嵐』,第6番『喜び』,第10番『狩』, 第11番&第12番

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ヴィヴァルディ『和声と創意への試み 作品8』初版の表紙

続々と出版されるヴィヴァルディの曲集!

1711年、アムステルダムE.ロジェ社の上質な印刷とプロモーションにより、『調和の霊感 作品3』でヨーロッパ出版界を席巻したヴィヴァルディは、同社から次々にコンチェルト集を出版していきます。

翌年の1712年から1713年にかけて、さっそく第2弾として協奏曲集『ラ・ストラヴァガンツァ 作品4』を出版します。

実はこの曲は、2年半ほど前、このブログを始めて一番最初に取り上げた曲なのです。最初は曲の解説はほとんどせず、ただただ、古楽器演奏のエキサイティングな響きをひとりでも多くの人に知っていただきたい、と思って取り上げました。

昔の記事では第1番しか掲げていませんが、ビオンディのヴィヴァルディのインパクトを伝えたい!というのがこのブログを始めた動機のひとつだったのです。

www.classic-suganne.com

この曲集も大ヒットし、1716年から1717年には『ヴァイオリン協奏曲集 作品6』『ヴァイオリンまたはオーボエ協奏曲集 作品7』を出版。

ここで印刷業者のロジェ氏は亡くなり、その経営を引き継いだ「ル・セーヌ社」により、1725年に、久々に題名のついた協奏曲集『和声と創意への試み 作品8』が出版されます。

『四季』は全12曲のうちの4曲

全12曲で、そのうち第1番から第4番が有名な『四季』で、一般には『協奏曲集〝四季〟』として親しまれていますが、ヴィヴァルディは献辞の中で『四季』というテーマには言及したものの、セットとしてはあくまで12曲で、そのうちの4曲の抜粋、ということになります。

『和声と創意への試み』とは、また理屈っぽい題名ですが、〝創意〟にあたる「インヴェンツィオーネ invenzione」は、バッハの「インヴェンション」と同じで、新しい実験を重ねて創意工夫した、というような意味になります。

〝和声〟にあたる「アルモニア armonia」は、「調和の霊感」と同様、これも斬新なコード進行を工夫した、という意が込められています。

その野心的なタイトルのように、『調和の霊感』が出世作とすれば、この『和声と創意への試み』は、円熟期、絶頂期の作品と言ってよいでしょう。

クラシックの枠を超えて親しまれている『四季』以外の曲も、そこまで知られてはいませんが、珠玉の作品ですので、まずはそれから聴いてみたいと思います。

今回は底抜けに明るい長調の曲たちを、次回はしっとりとした短調の曲たちを取り上げます。

ちなみに、この曲集はボヘミアの貴族モルツィン伯爵ウェンツェスラウに献呈されていますが、若きハイドンが初めてその楽長に就任したモルツィン伯爵カール・ヨーゼフとは別人です。

ヴィヴァルディ:『和声と創意への試み 作品8』第5番 ヴァイオリン協奏曲 変ホ長調 RV253『海の嵐』

Antonio Vivaldi:Il cimento dell'armonia e dell'inventione op.8, no.5 Concerto Es-dur, RV253 “La tempesta di mare”

演奏:ファビオ・ビオンディ(指揮とヴァイオリン)、エウローパ・ガランテ

Fabio Biondi & Europa galante

第1楽章 プレスト

『海の嵐』というのはヴィヴァルディ本人が名付けたタイトルで、まさしく海を吹きすさぶ暴風、逆巻く波を現わしている音楽です。16音符の音階、アルペッジョ、跳躍する音程が嵐の情景を描写します。ソロのヴァイオリンと第1ヴァイオリンがユニゾンで曲を始め、それから1小節ずらしながら、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロと通奏低音が次々に加わって、嵐を演出します。〝海の嵐〟というテーマはこの時代好まれたようで、ヴィヴァルディには同じタイトルのフルート協奏曲があります。またハイドンも、若い頃、経験したことがない海の嵐を表現すべく工夫し、何とか仕上げて好評を得たものの、老齢に差し掛かってからロンドンに渡るとき、ドーバー海峡で本物の海の嵐に遭遇し、それが自作とは〝全然違った〟ので大笑いした、というエピソードがあります。

第2楽章 ラルゴ

嵐が収まり、穏やかに鎮まった海を表すように、ヴァイオリンがゆったりとしたソロを聞かせます。わずか16小節の静けさですが、大胆な転調がなされます。

第3楽章 プレスト

特徴的な3拍子のはねるようなリズムです。5回のトゥッティの間に4回のソロが挟まりますが、ソロ・ヴァイオリンはその度に変幻自在に変化し、超絶技巧を繰り広げます。実にドラマティックなコンチェルトです。

ヴィヴァルディ:『和声と創意への試み 作品8』第6番 ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 RV180『喜び』

Antonio Vivaldi:Il cimento dell'armonia e dell'inventione op.8, no.6 Concerto C-dur, RV180 “Il piacere”

第1楽章 アレグロ

〝喜び〟というのはヴィヴァルディの命名ではなく、後世ついた愛称です。由来は分かりませんが、生き生きとした楽想がそう思わせたのでしょう。ヴィヴァルディの長調のコンチェルトはどれも明るいので、全部当てはまるような気もしますが。リトルネッロ形式で、4つのトゥッティに3つのソロが挟まります。2回目と3回目のトゥッティは短調で、ソロは短調長調を何回も転調しますが、まさに和声と創意、の真骨頂です。

第2楽章 ラルゴ・エ・カンタービレ

ホ短調のしっとりとしたシシリアーノです。途切れ途切れのフレーズが、そこはかとない哀愁を漂わせています。

第3楽章 アレグロ

トゥッティの旋律は大きく飛躍する伸び伸びとしたものです。第1楽章と同じく4つのトゥッティに3つのソロで構成されます。ソロのヴァイオリンも低くうなったと思えば高らかに上昇し、まさに喜びを全身で表しているかのようです。

ヴィヴァルディ:『和声と創意への試み 作品8』第10番 ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調 RV362『狩』

Antonio Vivaldi:Il cimento dell'armonia e dell'inventione op.8, no.10 Concerto B-dur, RV362 “La caccia”

第1楽章 アレグロ

これまでも見てきたように、『狩』と題された曲はたくさんあり、この曲集の『四季・秋』にもズバリその描写がありますので、このテーマはよほど当時受けたと思われます。『秋』には狩のソネットがついていますから明白ですが、この曲が狩と呼ばれるのは、トゥッティのメインテーマが狩のホルンを想起させることからきたようです。ヴァイオリンのソロと、第1、第2ヴァイオリンが、テーマをカノン風に追いかけるのも、狩人と獲物の追いかけっこを思わせます。楽しい中にも緊迫感あふれる素晴らしい楽章です。

第2楽章 アダージョ

ソロのヴァイオリンが訥々とした音型をつぶやきます。ニ短調の冷めたような曲想は、死んだ獣への弔いなのか、獲物に逃げられた狩人のグチなのか…

第3楽章 アレグロ

狩人たちのダンスを思わせるような活発な最終楽章です。獲物をたくさん獲得して、皆で喜んでいる情景が浮かびます、タイトルがついていると、そのイメージに引きずられてしまうのは、良くも悪くもですが。ソロ・ヴァイオリンが次々に繰り出す新しい走句が聴きどころです。

ヴィヴァルディ:『和声と創意への試み 作品8』第11番 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 RV210

Antonio Vivaldi:Il cimento dell'armonia e dell'inventione op.8, no.11 Concerto D-dur, RV210

第1楽章 アレグロ

タッタッター、というモチーフを、まずソロ・ヴァイオリンと第1ヴァイオリン、そして第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ・コントラバスチェンバロが順番に奏していくのには、思わず楽しくなってしまいます。ソロ・ヴァイオリンが華麗に自分の世界を展開している間も、トゥッティはタッタッターを奏でています。ひとつの統一されたモチーフをとことん展開していくのは、ベートーヴェンの『運命』の走りだというのは言い過ぎでしょうか。

第2楽章 ラルゴ

合奏が弱奏のリズムを奏でる上を、ソロ・ヴァイオリンが情緒纏綿としたメロディを乗せて歌います。

第3楽章 アレグロ

いつものような舞曲風ではなく、フーガのような開始で各楽器が入っていくのに意表を突かれます。しかし、ポロフォニックな処理は部分的にとどまり、ホモフォニックな部分とが組み合わされ、実に凝った構成になっています。この曲集の中でも特に充実した、聴きごたえのある楽章です。

ヴィヴァルディ:『和声と創意への試み 作品8』第12番 ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 RV178

Antonio Vivaldi:Il cimento dell'armonia e dell'inventione op.8, no.12 Concerto C-dur, RV178

第1楽章 アレグロ

5回のトゥッティと4回のソロが交替する大規模なリトルネッロ形式です。実に生き生きとした、踊るようなテーマが展開していきますが、オペラ劇場から出てきたのではないかと思うくらいドラマティックでもあります。

第2楽章 ラルゴ

澄み切った響きの中間楽章です。切ないソロの歌を支えるのは、チェロとチェンバロだけです。

第3楽章 アレグロ

第1楽章とも関連するテーマが、リズミカルに展開していきます。他の曲と比べ、ソロよりもトゥッティの方が存在感があるのが特徴的です。ヴィヴァルディのコンチェルトは、人によっては同じように聞こえるかもしれませんが、ハマるとやみつきになってしまう魔力があります。

第12番のオーボエ独奏版

このヴァイオリン協奏曲集のうち、第9番と、この最後の12番は、オーボエ協奏曲として演奏してもよい、と書かれています。ソロとトゥッティの音色の対比ということでは、オーボエの方が際立って聞こえます。

ぜひ、聴き比べてみてください。

ヴィヴァルディ:オーボエ協奏曲 ハ長調 RV449

Antonio Vivaldi:Concerto per oboe C-dur, RV449

演奏:トレヴァー・ピノック指揮 イングリッシュ・コンサート、ポール・グッドウィン(オーボエ

Trevor Pinnock & English Concert, Paul Goodwin

第1楽章 アレグロ

第2楽章 ラルゴ

第3楽章 アレグロ

 

Vivaldi: La tempesta di mare / Fabio Biondi, Europa Galante

Vivaldi: La tempesta di mare / Fabio Biondi, Europa Galante

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMI Classics
  • 発売日: 2000/04/25
  • メディア: CD
 

 

次回は短調の曲を聴きます。 

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

 

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