このあたりで、私とクラシックとの出会い、そして今に至るまでの音楽遍歴をつづらせていただきたいと思います。
前世の記憶?デジャヴ?
おそらく、幼稚園に上がる前くらいの頃だと思いますが、親の友人が、「ソノシート」をたくさんくれたのです。「ソノシート」など、若い人には分からないでしょうけど、ペラペラの、乱暴に扱うと破れてしまうようなレコードなのです。
針を落とすと立派に音が鳴るのが、今思っても不思議なくらいで。
安く、ペラペラなので、雑誌の付録にもよくついていたものです。
もらったソノシートに童謡に交じって、いくつかクラシックの小品がありました。
その中にあったのが、ヘンデルの『調子の良い鍛冶屋』。聴くと、なぜかものすごく懐かしい思いになり、大のお気に入りになりました。
私は、前世とか、生まれ変わりとか、科学的根拠のないものは基本信じられないのですが、あまりの懐かしさに、自分は前世はバロック時代のヨーロッパで生きていたのではないか…と思えるくらいでした。
その演奏はピアノだったのですが、本来はハープシコード(当時はこの英語での呼び方の方が一般的でした。今ではイタリア語のチェンバロに統一されています。)という楽器で弾くものだということを知りました。
ラジオでチェンバロの音色を聴いて、すっかり魅了され、なんとしてもチェンバロで弾いた調子の良い鍛冶屋を聴きたくてレコードを探したのですが、どうしても入手できませんでした。
小学校の時になって、親がチェンバロで弾いたバッハのイタリア協奏曲、イギリス組曲のレコードを探して買ってきてくれたのですが、ようやく調子の良い鍛冶屋を聴けたのはCD時代のことだったように思います。
クラシック通のクラスメイト
幼稚園の時には、親が『ペルシアの市場にて』や『剣の舞』などの小品の入ったレコードを何枚か買ってくれたので、ますますクラシックが好きになりました。
我ながらマセた子供だったように思いましたが、小学校に行くと、上には上がいるもので、すごいクラスメイトがいました。
彼はピアノも弾けて、本格的なクラシックに詳しかったのです。彼からショパンやベートーヴェンの話を教えられ、大いに興味を持ちました。
彼はクラスにたいてい一人か二人はいるひょうきんなタイプでもあり、彼の一発芸は〝シューマンの死に方〟でした。ピアノを弾きながら、いきなり鍵盤に突っ伏して息絶えるのですが、そんなのオトナでも分かりませんね。笑
ベートーヴェンの『英雄』を薦められ、親に頼んだら間違って『皇帝』を買ってきて、これは違うよ、と怒られたこともありますが、後になって、『皇帝』を聴くと君を思い出すよ、と言ってくれました。
クラスにも何人かクラシック好きがいて、カラヤンのレコードを何枚持っているか、自慢し合ったりもしました。
学校の休み時間には必ずロッシーニの『セビリアの理髪師序曲』がかかるので、ひとり校庭に出て聴き入った覚えもあります。
家では、ベートーヴェンの『田園』を大音量でかけ、第4楽章が来ると妹と布団に潜り込む〝嵐避難ごっこ〟もしたりしました。
小学校の卒業式の夜、『第九』をひとりで聴いて、これからみんなバラバラになってしまうのだと悲しくなり、二重フーガのくだりで涙が出てきたのも思い出します。
とにかく、クラスメイトにも恵まれ、クラシックに思いきり親しんだ小学校時代でした。
クラスにはヴァイオリンが得意な女の子もふたりもいて、ひとりはヴァイオリン教師に、もうひとりは今でもアマチュアながら本格的な演奏活動を続けています。
この頃は、クラシック好きが〝孤独〟ではなかったなぁ、としみじみ思います。
中学生になると、どっぷり松田聖子にハマって、いったんクラシックからは遠ざかります。笑
しかし、高校生の時に映画『アマデウス』を観て、再びクラシック熱が高まり、古楽器を知ってさらに夢中になり、今に至ります。
歴史も、子供の頃から好きだったのですが、小学校高学年のときに吉川英治の『三国志』を読んで中国史に夢中になりました。
しかし、アマデウスによって、高校以降は西洋史にも興味がわき、結局、日本史も世界史も大好きになって今に至ります。
大学では、漢文が得意だったので東洋史を専攻したのですが、興味の主体は西洋に移ったので、転専攻試験を受けて2年生から西洋史専攻に移り、卒論はモーツァルトをテーマにしました。
そのため私の音楽話は、音楽の専門知識がないので、どうしても歴史エピソードが中心になってしまうのです。
就職後、幸いにして仕事で海外各地に行くことができ、歴史の舞台をたくさん自分の目で見ることができました。
そんなわけで、クラシック音楽と歴史は私の人生そのものであり、このブログで、自己満足的ではありますが、思いをつづらせていただくことにしました。
『調子の良い鍛冶屋』は、ヘンデルの組曲の一部ですが、独立した小品として広く親しまれています。
ピノックの演奏がやはり標準的だと思います。
ヘンデル『調子の良い鍛冶屋』
(チェンバロ組曲第5番ホ長調 エールと変奏 HWV430)
Air and Variations “The Harmonious Blacksmith”
(Harpsichord Suite No.5 in E , HWV430)
演奏:トレヴァー・ピノック(チェンバロ)
Trevor Pinnock
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
にほんブログ村