クラシックの秋
残暑も収まり、金木犀の香りただよい、ようやく秋らしくなってきました。
秋、一番好きな季節です。
私が思うクラシックを聴く好条件、それは『秋』『夜』『雨』です。
この三拍子が揃ったら、とっておきのワインを開けて、どっぷり浸るしかありません。笑
お気に入りの曲、演奏は星の数ほどありますが、その中でも別格な存在が、これです。
コレッリのヴァイオリン・ソナタを、リコーダーで吹いたものです。
数奇な運命の楽器、リコーダー
リコーダーについては、これまでも少し触れましたが、バロック時代までさかんに使われ、その後廃れ、学校教育で大復活したという、数奇な運命をたどった楽器です。
ドイツ語では「ブロックフレーテ」と言いますが、ブロックがあるフルート、ということです。分解すると、吹く部分の内部にブロックがあったのを覚えていますでしょうか。
小学生が下校中に吹くとピーピーとうるさいですが、ちゃんとした奏者が奏でれば、柔らかく繊細で、心温まる音色になります。
吹けば必ず音は鳴るので小学生に与えられたわけですが、簡単に音が出る代わりに、表情をつけたり、感情を込めたりするのは逆に難しいと言えます。
鍵盤を叩くと同じ強さの音しか出ないチェンバロと同じですね。
フルートのように、ビール瓶の口みたいに、音を出すにも技術の要る楽器の方が表現の幅は広くなります。(そういえば、ビール瓶でボーっとやる親父は最近みかけませんね。昭和の頃は一家に一台いたものですが)
あと、廃れた原因は音量の小ささです。いくら強く吹いても音量には限界があり、近代の大オーケストラの一員になることができませんでした。
しかし、バロックの頃の楽器は、全体的に音量は小さめでした。
宮殿の一室で、限られた人数で演奏するのですから、それで十分です。
逆に、大きな音は敬遠されました。ヴァイオリンが登場したとき、何てうるさい下品な楽器だ、と評判は悪かったそうです。
チェンバロも、ホールで聴くとかなり小さい音ですが、その前身のクラヴィコードなど、まさに蚊の鳴くような音です。
CDで聴くと音量を大きくしてしまうので気づきませんが、リアルの演奏を聴くとかなりショックを受けます。
さて、作曲者のコレッリの紹介は次回にしたいと思いますが、私が最高に好きな作曲家です。
作曲家の優劣を論じるのは愚かしい、と言ったばかりですが、そういうことではなしに、私個人の心の琴線に触れる度、というか、内面を代弁してくれる度でいけば、1にモーツァルト、2にヘンデル、3にハイドン、といった順位かなと思います。しかし、別格一位なのがコレッリなのです。
そのコレッリの代表作、ヴァイオリン・ソナタ作品5を、リコーダーで吹いたのがこの演奏です。
リコーダーは、2014年に亡くなった古楽器演奏の巨匠、フランス・ブリュッヘンの若い頃の演奏です。ブリュッヘンは『18世紀オーケストラ』を指揮して、アーノンクール、ガーディナー、ホグウッド、ピノックらとともに、古楽器大ブームを引き起こした一人です。若い頃は、リコーダーやフラウト・トラヴェルソ(フルートの前身)など、古い木管楽器奏者として知られていました。
通奏低音は、チェンバロがこれも古楽器演奏の草分けの一人グスタフ・レオンハルト、チェロも、バロック・チェロの第一人者アンナー・ビルスマ、という超豪華メンバーのトリオです。
1979年から1980年にかけての古い録音ですが、今でも新鮮な演奏です。
ただでさえコレッリの優しい、心に沁み入る旋律が、柔らかく温かいリコーダーの音色で、癒されることこの上ありません。
作品5は全12曲なのですが、このリコーダー版では第7曲から第12曲までが取り上げられています。
まず今回は、第9曲をご紹介します。
Corelli : Sonata Es-dur , OP.5, Nr.9
演奏:フランス・ブリュッヘン(ブロックフレーテ)、アンナー・ビルスマ(バロック・チェロ)、グスタフ・レオンハルト(チェンバロ)
Frans Bruggen , Anner Bylsma , Gustav Leonhardt
第1楽章 プレリュード(ラルゴ)
なんという抒情でしょう。何の飾り気もなく、素直に語りかけてきます。幼子のような、素朴な心情がつづられます。
パッヘルベルのカノンについているジーグと同じダンス曲です。階段を軽やかに降りてくるような軽快なリズムです。
哀調に満ちた、つなぎの短い楽章です。次の曲の明るさを引き立てる絶妙な配置です。
第4楽章 テンポ・ディ・ガヴォット(アレグロ)
同じくダンス、ガヴォットのテンポで軽快に奏でられます。
ぜひ、心が疲れたときに、聴いてみていただきたいです。
次回は、同じ演奏で、特に私の思い入れのある第11曲をご紹介したいと思います。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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