スザンナの浮気現場を押さえたと思ったアルマヴィーヴァ伯爵、フィガロに見せて結婚をぶち壊してやろうとしますが、スザンナは開き直ります。
伯爵は、なんだ、罪を犯したのに平気なのか?となじりますが、スザンナは、ケルビーノは伯爵夫人への取りなしを頼みに来たんです、と堂々と答えます。
伯爵は、スザンナを口説いているのを全部ケルビーノに聞かれていたことに気づき、また激高。
ケルビーノは『聞かないようにしてました』と下手な言い訳。
そうこうするうち、バジリオが、お静かに、人が来ます!と叫びます。
フィガロが、村人たちを連れてやってきたのです。
村人たちは、伯爵を讃えて歌います。
第8曲 村人たちの合唱『娘たちよ、花を撒け』
村人たち
娘たちよ、喜びに満ちて花を撒け、気高いご主君の前に
その偉大なお心は、美しい花の聖なる純潔を、無垢のままにしてくださる
これはフィガロの策略で、村人たちに初夜権を廃止した伯爵を讃えさせ、取り消すことのできないようにしたのです。
(レチタティーヴォ)
伯爵
なんだ、この芝居は?
フィガロ
ご領主様、なにとぞ私たちの心を込めた捧げものをお受け取りください
恋人たちが恐れていたあの権利を廃止していただいたことにより・・・
伯爵
あの権利はもはや存在しない!
だから何だ?
フィガロ
そのご英断の最初の果実をきょう、私どもがいただくのです
なにとぞ、お恵みで純潔なままの彼女に、そのしるしとしてこの純白のベールを直々に着せていただきたきますよう
伯爵(傍白)
謀ったな!
伯爵
ありがとう、皆の者。気持ちに感謝する
しかし、私は贈り物や賛美の言葉を受ける資格はない
あのような良からぬ特権を廃止するのは当然のことだからだ
一同
ばんざい! ばんざい! ばんざい!
スザンナ(嫌味っぽく)
なんという気高いお心!
フィガロ
なんという正義!
伯爵
しかし、式を挙げるのは少し待ってほしい
出来る限り盛大にやりたいから、準備が必要だ
傍白(マルチェリーナはどこだ?)
では一同、行きたまえ!
(合唱繰り返し)
フィガロは、伯爵に初夜権の廃止を確認させることができましたが、伯爵に式を延期され、時間稼ぎをさせられてしまいました。伯爵は、その間にマルチェリーナに訴訟を起こさせようと考え、そうとは知らないフィガロも次の策を考えています。
その前に、ケルビーノの処分があります。
一同、ケルビーノを許してもらうよう、伯爵に嘆願します。
渋っていた伯爵、いい手を思いついて告げます。
ケルビーノを許す代わりに、連隊の将校に任命する、というのです。
そして、連隊本部のあるセビリアにいますぐ出発せよ、と命じます。
栄転に見えて、結局のところ追放です。
ケルビーノは首よりマシなので、しょんぼりしながら辞令を受けます。
フィガロは、ケルビーノを使った策を考えていたので、あとで話がある、と小声で伝えたあと、伯爵の前で、ケルビーノをからかい半分に励ます歌を歌います。
これが、このオペラで最も有名な曲、『もう飛ぶまいぞ、この蝶々』です。
第9曲 フィガロのアリア『もう飛ぶまいぞ、この蝶々』
フィガロ
もう飛べないぞ、恋の蝶々よ
昼も夜もうろついては、女たちを悩ませていた恋のナルシス、アドーニスよ
もうかぶれないだろう、羽飾りつきの帽子も、
このカールも、きれいな衣装も、女のような化粧もできないぞ
兵隊たちにまじってがんばれよ!
髭はやして、背嚢しょって、鉄砲かついで、腰には剣
背筋を伸ばして、口を結んで
鉄兜にターバン、名誉はあるが、金はない
ダンスを踊る代わりに、泥の中を行進だ
山越え、谷越え、冬には雪、夏は酷暑
ラッパが鳴れば銃声砲声響き合い
乱れ飛ぶ銃弾は、耳にも妙な音楽だ
さあ進め、ケルビーノ!
軍人の勝利と栄光に向かって!
この曲の後奏は、行進曲となり、心が踊る絶大な効果を生みます。
このオペラがプラハで大ヒットしたとき、町じゅうの人々が口ずさんだのがこの曲でした。
次回作『ドン・ジョヴァンニ』でも、この曲を流し、登場人物に〝この曲はあまりにも有名だ〟などと言わせています。
そして、しょげるケルビーノの背を叩きながら、第1幕の幕が下りるのです。
次回は、第2幕です。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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