前回に続き、バッハの『平均律クラヴィーア曲集 第1巻』のご紹介です。
全24曲中、今回は第9番から第16番までです。
バッハ『平均律クラヴィーア曲巻 第1集 第9番~第16番』
The Well-Tempered Clavier, Book 1 no.9-16 BWV854-861
演奏:グレン・グールド(ピアノ) Glenn Gould
第9番 ホ長調(BWV854)
【プレリュード】どこまでも優しく、癒される音楽です。頭を撫でられているように心地よく、身を任せたくなる曲です。
【フーガ】3声。元気で快活そのもののフーガです。よしがんばろう、という気にさせてくれます。
第10番 ホ短調(BWV855)
【プレリュード】哀調あるメロディが淡々と進んでいきますが、最後の方でいきなりプレストに転じ、ドラマチックな展開を見せます。意表をつく、バッハならではの仕掛けです。
【フーガ】2声。バッハが2声で書いた唯一のフーガです。東洋的な香りもする、不思議な曲です。
第11番 ヘ長調(BWV856)
【プレリュード】トリルが印象的な、軽快な曲です。明るい長調ながら、時々陰翳がゆらめきます。
【フーガ】3声。親しみやすいメロディですが、プレリュードと同じように、少し影を感じる曲です。
第12番 ヘ短調(BWV857)
【プレリュード】晩秋の夕暮れのような、静かな寂しさに満ちた曲です。途中、寒い中でありついた温かいスープのような和音も用意されています。
【フーガ】4声。プレリュードの序章をそのまま続けて物語にしたような曲です。半音階の不安なフレーズもよぎり、どう終わるのか分からない複雑な展開ですが、最後はあっさりと終わるところがまた意表をつきます。
第13番 嬰ヘ長調(BWV858)
【プレリュード】一転、春が来た予感のする、早春の香りのする音楽です。まだ本格的な春は遠いですが、希望の光を見つけたような、静かなうれしさが込められています。
【フーガ】3声。テーマは天使が高らかに歌うように響き、福音を告げ知らすような輝かしさを感じます。
第14番 嬰ヘ短調(BWV859)
【プレリュード】決然と、目に涙を浮かべながら故郷を去る旅人を思わせるような、颯爽とした哀歌です。
【フーガ】4声。逆に、切々と自分の思いを語る人のような曲想です。ここでは、〝ため息モチーフ〟というフレーズが用いられているのです。
第15番 ト長調(BWV860)
【プレリュード】明るく陽気で、見事なまでにかっこいい曲です。私も全曲中、最も愛してやまない曲です。しびれます。
【フーガ】3声。これも弾むように軽快で、うきうきとしたフーガです。軽いようで、短調の陰も見せる、深い曲でもあります。最後に向けての盛り上がりも、まるでオペラのフィナーレを見るようで、最高です。第1番のフーガのように、最後には至高天に到達する思いがします。
第16番 ト短調(BWV861)
【プレリュード】ト短調はモーツァルトにとって宿命的な調ですが、まさにオペラの悲劇のヒロインが悲しみを歌うアリアのような曲です。高音部はまさにソプラノの歌のように心に響きます。
【フーガ】4声。プレリュードに続く、ひとつの物語のような、切々としたフーガです。
次回、第17番から第24番です。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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