孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

時間と音階の不思議な一致。グレン・グールド×バッハ『平均律クラヴィーア曲集 第1巻』(3)

前回に続き、バッハの『平均律クラヴィーア曲集 第1巻』のご紹介です。

全24曲中、今回は第17番から、最後の第24番までです。

バッハ『平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第17番~第24番』

The Well-Tempered Clavier, Book 1 no.17-24 BWV862-869

演奏:グレン・グールド(ピアノ) Glenn Gould

第17番 変イ長調(BWV862)

【プレリュード】ヴィヴァルディのコンチェルトにみられるリトルネッロ形式なので、明るくイタリア風に響きます。浮き立つようでいて、気品のある曲です。

【フーガ】4声。プレリュードの雰囲気を引き継ぎ、軽快な中に落ち着いた感じのするフーガです。

第18番 嬰ト短調(BWV863)

【プレリュード】切々と心の中の思いを吐き出すような曲ですが、この珍しい調ならではの激しさも秘めています。

【フーガ】4声。特徴的なテーマが表情豊かに展開していきます。ハーモニーが変幻していく様が心に沁み入ります。

第19番 イ長調(BWV864)

【プレリュード】さわやかなテーマがフーガ的な展開を見せます。高台に立って、平原を見はるかしているかのような、大きな気分にしてくれます。

【フーガ】3声。8分の9という変わった拍子です。最初の孤立した音にハッとさせられますが、その後淡々としながら進んでいくのにもかえって意表をつかれます。

第20番 イ短調(BWV865)

【プレリュード】サスペンス的なドラマチックさに満ちた曲です。バッハにしては直截的で単純な響きですが、それが逆に心に残ります。

【フーガ】4声。全曲中でも、特に長大で複雑なフーガです。〝練習曲〟の域を超えた難曲で、特に曲の最後はピアノでは弾けず、オルガンでしか弾けないので、他の曲より早く、オルガン曲をたくさん作ったワイマール時代に遡る曲では?とも言われています。

第21番 変ロ長調(BWV866)

【プレリュード】軽やかで、流れるような曲です。それでいて、和音が様々に変化し、複雑な表情を見せます。バッハの華麗な即興演奏を彷彿とさせます。

【フーガ】3声。楽しく、かつ奥の深い、人気のある曲です。短いですが、色々な思いを心のうちに惹起させてくれます。

第22番 変ロ短調(BWV867)

【プレリュード】宗教曲を思わせるような厳粛なたたずまいの曲です。教会でひたすら祈りを捧げている乙女の姿が目に浮かびます。何を祈っているのでしょうか…。

【フーガ】5声。瞑想にふけるような深淵なフーガです。深山の奥で座禅を組んでいる僧侶のように、東洋的なものを感じます。

第23番 ロ長調(BWV868)

【プレリュード】明るい曲ですが、決して派手ではなく、奥ゆかしい響きです。変ロ短調ロ短調に挟まれたこの曲は、〝2つの深淵の間に咲いた一輪の草花〟と言われています。

【フーガ】4声。プレリュードに引き続き、落ち着いたフーガです。さりげないテーマが展開していく様は、秋の昼下がり、斜陽に照らされたうつくしい庭の景色を思わせます。

第24番 ロ短調(BWV869)

【プレリュード】ロ短調はバッハに宿命的な調性であり、この曲集の末尾を飾るにふさわしい曲です。時計のように刻むリズムは、時の運命を示すかのようです。特にこの曲には、アンダンテの速度表示があります。

【フーガ】4声。プレリュードに引き続き、時を刻むようなリズムで展開していきます。曲想は複雑かつ崇高で、何を表現しているのか、古来議論の的になってきました。この曲にもラルゴの指定がありますが、グールドはあえて速めに演奏しています。曲が終わった後、考えさせられるような意味深な音楽、演奏です。

我が家の時計

我が家のリビングには、お気に入りの電波掛時計があります。

どんな時計か、特徴を製品のHPより引用します。

音階時報時計グランソルフェB1は音程感覚を幼児期から身につける方法として開発しました。
時計文字板をご覧下さい。
この時計の文字板には見慣れないアル ファベットが記されています。
この時計の特徴は時刻表示を音階音の基礎音ドと各時刻にあてはめた音階音の2音での表示方法を世界で初めて採用したことで す。
絶え間なく鳴らされる時報音に音程感覚を身につける効果をもたせたものです。
この時計を御家庭に設置することにより、お子さんの音程感覚の育成に是非お役立て下さい。
この製品は絶対音感の訓練にも利用することができます。

SCHLAGEN 音階時報時計

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我が家の掛時計〝グランソルフェ〟

ということで、この時計は、時報でドとともに、12の音を鳴らし、そのあとに、お好み設定で、バッハの平均律クラヴィーア曲集第1集の、それぞれの長調のプレリュードが流れる、というものなのです。

音階も12、一日の時刻も12、という、宇宙の神秘を感じさせる一致を利用したもので、まさに、我が家の日々の生活はバッハの平均律とともにあるのです。

ただ、子供に絶対音感はつかずじまいでしたが。笑

音階、そして時間。バッハの平均律クラヴィーア曲集は、耳に心地よいだけでなく、まさに宇宙の秩序を現出したものなのです。

 

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

 

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