地底から響くドラム
ハイドンの第2期ザロモン・セットの5曲目は、シンフォニー第103番〝太鼓連打〟です。
シンフォニー冒頭に、極めて異例の、ティンパニによるドラムロールがあるので、この名がつきました。
軽い印象の曲が多いハイドンのシンフォニーですが、この曲にはどこか深いものを感じます。
冒頭のドラムロールからして、地底の底から響いてくる気がします。
ハイドン:交響曲 第103番 変ホ長調 Hob.Ⅰ:103〝太鼓連打〟
F.J.Haydn : Symphony no.103 in E flat major, Hob.Ⅰ:103 “Drumroll”
マルク・ミンコフスキ指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル
Marc Minkowski & Les Musiciens du Louvre
この演奏では、冒頭のドラムロールの前にアレンジのパフォーマンスがついています。これはこれでいい感じで、私は好きです。続く序奏の音型は、往年のスピルバーグ監督の映画『未知との遭遇』に出てくる、宇宙人と交信する電子音を思わせます。そのせいもあって、この曲には神秘的なものを感じてしまいます。主部は明るく楽しい主題ですが、展開部は深く、ハイドンはさらに新しい境地を開いたことを示します。クライマックスで突然、また冒頭のドラムロールが入るのも、当時の人の度肝を抜いたことでしょう。序奏の再現も異例で、内容的にもベートーヴェンのシンフォニーの先取りをしています。
第2楽章 アンダンテ・ピウ・トスト・アレグレット
このテーマも、素朴でありながら、どこか不気味な雰囲気を持っています。低弦の伴奏が何ともいえません。変奏曲になっており、第2変奏はどこか鄙びた香りがしますが、底抜けに明るいものではありません。ハイドンのシンフォニーでも異色の音楽ですが、初演ではアンコールされたということです。
流れるように、とはいかない、むしろつんのめるようなメヌエットです。トリオでは、新しい楽器クラリネットが活躍します。クラリネットは第2期ザロモン・セットから加わりますが、初めてここで目立つ働きをしてくれるのです。
第4楽章 フィナーレ:アレグロ・コン・スピリート
ホルンの信号で導入され、トゥッティで爆発する、ハイドンのフィナーレの中でも大いに盛り上がる曲です。クラシック好きだった亡き祖父に聴かせたとき、『自分はこういう曲が好きなんだよ』と言ってくれた思い出の曲です。
いよいよ、ハイドンのロンドン・セットは次回でフィナーレとなります。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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