孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

女に乾杯!美酒に乾杯!饗宴の中、亡霊の足音が近づく…。オペラ『ドン・ジョヴァンニ』(15)第2幕フィナーレ(前)

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ドン・ジョヴァンニの舞台衣装

モーツァルトドン・ジョヴァンニ』第1幕第13場

BGMはライバルと自分の曲

このオペラも、いよいよ大詰めです。

ドン・ジョヴァンニは墓場で、自分が殺した騎士長の石像に出会い、戯れに晩餐に誘ったところ、『行く』と返事したため、自宅で盛大に食事の支度をします。

そしてまず一人で饗宴を始めるようレポレロに命じ、召使いたちは豪華な食事と酒を運び始めます。

時間としては墓地でのやりとりが夜の2時ですから、晩餐といっても夜明け前くらいになります。

饗宴の始まりは、浮きたつような音楽で、たったひとりの宴にはふさわしくありません。

ドン・ジョヴァンニは、楽士たちにBGMの演奏を命じ、ここで3曲が奏されます。

1曲目は、マルティン・イ・ソレルの『ウナ・コーサ・ララ』。

2曲目は、ジュゼッペ・サルティの『リティガンティ(とんびに油揚げ)』。

いずれも当時のヒットオペラからの人気曲です。

特にサルティの曲は、その人気でウィーンでの『フィガロの結婚』の上演をたった9回で打ち切りに追いやったライバル曲でした。

そして3曲目は、その自身の『フィガロの結婚』の大ヒット曲、フィガロのアリア『もう飛ぶまいぞ、この蝶々』でした。

この曲が始まると、レポレロが『こいつはあまりにも有名だ』と言うので、プラハの観客はさぞ大笑いしたことでしょう。

ドン・ジョヴァンニは昔のスペインの設定ですが、ここでの音楽は〝現代の曲〟なのです。

 

第24曲 第2幕フィナーレ

ドン・ジョヴァンニ

さあ、食卓の用意は出来た。

では諸君、音楽をやってくれたまえ。

自分の金を使うからには、思い切り気晴らしをしたいのだ。

(テーブルにつく)

レポレロ、早く食事を並べろ。

レポレロ

ただいますぐに。

(召使いたちが食事を次々に運ぶ。楽士が演奏を始める。)

ブラヴォー!『コーサ・ララ』だ!

ドン・ジョヴァンニ

どうだ、この素敵な音楽は?

レポレロ

あなた様にふさわしいもので。

ドン・ジョヴァンニ

ああ、なんてうまい料理だ!

レポレロ(傍白)

なんてすごい食欲だ!でかい口でひと呑みだ!

見ていると気が遠くなりそうだ。

ドン・ジョヴァンニ(傍白)

俺の食べっぷりに、奴め、気が遠くなりそうだな。

次の料理!

レポレロ

ただいま!

(楽士が曲を変える)

ブラヴォー!『リティガンティ』だ!

ドン・ジョヴァンニ

酒をつげ!

素晴らしい酒、マルツィミーノ!

レポレロ

(こっそり盗み食いをする)

このキジの肉を一枚、こっそりいただいちまおう。

ドン・ジョヴァンニ

奴め、食いおるな。知らんふりをしといてやろう。

(楽士たち、また曲を変え『もう飛ぶまいぞ』を演奏する)

レポレロ

こいつはあまりにも有名だ!

ドン・ジョヴァンニ

おい、レポレロ!

レポレロ

(肉をいっぱい頬張ったまま)

ふぇい、たんなまま…

ドン・ジョヴァンニ

ばか者、ちゃんと言え!

レポレロ

風邪で声がうまく出ないんで…

ドン・ジョヴァンニ

食事中、ずっと口笛を吹いていろ。

レポレロ

吹けまへん…

ドン・ジョヴァンニ

なぜだ?

レポレロ

お許しください! 旦那のコックの腕前がいいので、あたしも味見してみたくなったんでさ。

ドン・ジョヴァンニ

俺のコックの腕前がいいので、あいつも味見してみたくなったんだとさ。

ドン・ジョヴァンニがひとりでご馳走を平らげていますが、空腹のレポレロは何ももらえません。

たまりかねてつまみ食いするのをドン・ジョヴァンニに見とがめられる、という小ネタを挟みつつ宴が進むうち、一人の女性がまろびこんで来ます。

それは、ドンナ・エルヴィーラでした。

彼女はドン・ジョヴァンニの破滅が近いのを察し、いてもたってもいられず、改心するよう忠告に来たのです。

しかし、その真剣なエルヴィーラの行動にも全く心は動かさず、かえって茶化す始末で、エルヴィーラもついにあきらめ、罵って帰ってしまいます。

ところが、外に出て行ったエルヴィーラが、絹を裂いたような悲鳴を上げます。

なんだなんだ、と追いかけたレポレロもうわあああっと悲鳴。

レポレロは戻ってくると、テーブルの下にもぐり込み、ガタガタ震えて歯の根も合いません。

(エルヴィーラが取り乱した様子で入ってくる)

エルヴィーラ

私の愛の最後の証しを、あなたにもう一度試してみたいの。

あなたの裏切りの数々はもう水に流しました。

あなたがかわいそうだから…!

ドン・ジョヴァンニ、レポレロ

なんだ、なんだ?

エルヴィーラ(ひざまずいて)

もはやあなたの心にお情けを求めようとは思っていません。

ドン・ジョヴァンニ

これは驚いた、何を望んでいるのだ?

あなたが立っていないなら、私も立ってはおられない。

(一緒にひざまずく)

エルヴィーラ

私の苦しみをあざけらないで!

レポレロ

涙が出るよ、この人にゃ…

ドン・ジョヴァンニ

あざけってなどいないよ。ああ、何が望みなのだ、いとしい人よ?

エルヴィーラ

生き方を変えて!

ドン・ジョヴァンニ

ブラヴォー!

エルヴィーラ

不実な人!

レポレロ

不実な人だ!

ドン・ジョヴァンニ

食事をさせてくれないか。よかったら君も一緒に食べないか。

エルヴィーラ

もう勝手にするがいいわ、ひどい人!

このまま悪の見本のような汚れた世界にいるがいいわ!

レポレロ

彼女の気持ちに心を動かされないようなら、旦那の心は石なのか、それとも心がないのか。

ドン・ジョヴァンニ

女に乾杯! 美酒に乾杯!

人間の命の糧にして栄光だ!

(エルヴィーラ退場)

キャーーーー!!

(エルヴィーラ、再び登場し、逃げまどいながら反対側へ逃げ去る。楽士たちも退場)

ドン・ジョヴァンニ、レポレロ

いったい何の悲鳴だ?

ドン・ジョヴァンニ

様子を見に行ってこい。

(レポレロ退場)

レポレロ

うわあああーーー!!

ドン・ジョヴァンニ

なんてひどい悲鳴だ!レポレロ、どうした?

レポレロ(おびえて登場、震えながら)

ああ、ご主人様..お助けを!…

ここから外に出ないでください!

石の…人間…真っ白い…人間が…

ああ旦那様…あたしゃゾッとして…気が遠くなる…

あの格好を見たら…あの音を聞いたら…

タ・タ・タ・タ!

ドン・ジョヴァンニ

なんのことか、さっぱり分からん。お前は気でも狂ったのだろう!

レポレロ

タ・タ・タ・タ!

ドン・ジョヴァンニ

本当に気が狂ったな。

(扉を叩く音がする)

誰かが戸を叩いている!開けてやれ!

レポレロ

滅相もない!

ドン・ジョヴァンニ

開けろと言っているのだ!

レポレロ

ああ!

ドン・ジョヴァンニ

たわけ! 面倒だというなら、俺が行って開けてやる。

(灯りを取り、剣を抜いて、自ら扉を開けに行く)

レポレロ(傍白)

二度とあんなものを見たくない!

この際こっそり隠れちまおう。

(テーブルの下に隠れる

レポレロは石像が現れた、と言うのを伝えようとしているのですが、ドン・ジョヴァンニにはいっこうに伝わりません。

そうこうするうち、運命の時が訪れます。

次回、オペラ史上最恐と言われる場面に。

 

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