五月晴れのコンチェルト
前回のピアノ・コンチェルト第20番ニ短調と、CDでは必ずと言っていいほどカップリングされるのが、この第21番ハ長調です。
この2曲は、光と影、陰と陽、月と太陽というほどにセットで聴くのがふさわしく、兄弟のような曲で、ニ短調がデーモン、そしてこの曲はアポロンにたとえられ、親しまれてきました。
おそらく、モーツァルトのピアノ・コンチェルトで一番人気なのではないでしょうか。
曲の構成は安定の極みにあり、“古典的完成”とはこうした作品を言うのでしょう。
澄み切った五月晴れのイメージです。
モーツァルト『ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467』
Mozart:Concerto for Piano and Orchestra no.21 in C major , K.467
演奏:ジョン・エリオット・ガーディナー(指揮)
マルコム・ビルソン(フォルテピアノ)
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
John Eliot Gardiner , Malcolm Bilson & English Baroque Soloists
行進曲風のリズムで始まり、私には、歩こう、歩こう、といっているように聞こえます。そう、前に、前に、と言われているようで元気が出るのです。
歩くうちに、景色も次から次へと楽しく変わっていき、心も晴れやかに、足どりも軽く進んでいる気分になります。
ピアノはかわいいトリルで入場し、繰り返される音階の上り下りは、まるで玉を転がすようです。
第2楽章 アンダンテ
この曲を一番有名にしている楽章です。喫茶店ではかなりの確率でこの曲がBGMに流れます。往年のスウェーデンの名画『みじかくも美しく燃え』(1967年)で使われたために、一躍有名になりました。私はまだ観たことがありませんが、それでここまでポピュラーになるのですから、相当印象的のようです。原題でもある映画のヒロインの名を取って、このコンチェルトの副題を『エルヴィラ・マディガン』としているディスクさえあります。
確かに、夢見心地な中に切ない哀愁が漂う、素晴らしい音楽ですが、有名すぎるとなかなか感情移入もしにくいのが、音楽の不思議なところでもあります。
モーツァルトの得意とする、大いに盛り上げるフィナーレです。管楽器とピアノが、お互いをからかうように追いかけっこするのも、モーツァルトのいつものパターンではありますが、ワクワクとして最後まで引き込まれてしまいます。
こちらは小編成のスクーンダーエルド版です。
演奏:アーサー・スクーンダーエルド(指揮とフォルテピアノ)&クリストフォリ
Arthur Schoonderwoerd & Cristofori
第2楽章 アンダンテ
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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