1曲あたり2日間で作曲!
ヘンデルがオラトリオの幕間に、観客への呼び物として演奏したのは、これまでご紹介したオルガン・コンチェルトのほかに、合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)があります。
当時、ヘンデルはロンドンで興行主としてオペラを上演し、名声は高まっていましたが、ライバル劇場との熾烈な競争や、オペラ歌手の横暴などトラブル続きで、破産寸前に追い込まれることもしばしば。
いったんはドイツに帰って保養せざるを得なくなるほどでした。
しかし、彼の頑強な精神力と体力、バイタリティは古今の偉人の中でもずば抜けており、奇跡の復活を遂げて、再びロンドンに乗り込んできました。
そして、イタリア・オペラの人気が衰えてきたことを察知して、オラトリオに転向するのですが、同時に、コレッリらイタリアのコンチェルトが流行っていることも目にしました。
そこで、ヘンデルは、わずか1ヵ月あまりの間に12曲の『グランド・コンチェルト 作品6』を書き上げ、出版しました。
1曲の作曲にかけた時間は、平均すると、わずか2日ほど。
ヘンデルによく見られる、他の作品からの転用も少ないです。
わざわざ〝作品6〟としたのも、当時、圧倒的な人気を得ていたコレッリの『合奏協奏曲集 作品6』を意識したのです。
ちまたで作品6、作品6、ともてはやされていたので、それを利用したわけですが、ヘンデルの商魂たくましさには頭が下がります。
現代で言えば、ネットでの検索を意識した、というところでしょうか。
コレッリの曲は、私にとってもかけがえのない曲として以前ご紹介しました。合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)とは、ということもこちらをご覧いただければと思います。
www.classic-suganne.com
しかし、短時間にもかかわらず、出来上がったこの曲集は、コレッリのものや、バッハのブランデンブルク協奏曲と並び称せられる充実したものになりました。
主な曲を聴いていきたいと思います
ヘンデル:合奏協奏曲 作品6 第1番 ト長調
Handel : Concerto oo.6 no.1 in G major, HWV319
演奏:ジョヴァンニ・アントニーニ指揮 ジャルディーノ・アルモニコ
Giovanni Antonini & Il Giardino Armonico
第1楽章 ア・テンポ・ジュスト
のっしのっし、と歩くような力強いトゥッティ(合奏群)の間に、繊細なソーリ(独奏楽器群)が奏でる牧歌的なテーマとのコントラストが、実に見事です。オペラ『イメネーオ』の序曲から転用されました。
元気活発なリトルネッロに思わず体が動いてしまいます。ソロは、リトルネッロに関連したテーマで、その合いの手が実に洒脱です。ワクワクが止まらない音楽です。
哀愁漂う悲しげな楽章ですが、ソーリはどこまでも繊細で、叙情が心に沁みていきます。
ヴァリオリンのソロでフーガが始まり、トゥッティが加わって盛り上がっていきます。元気な中に宿される高貴な感情に心奪われます。
生き生きとしたジーグで、ソロの問いかけにトゥッティが応え、エコーの効果を出しています。大河の流れのような雄大さを感じさせる、大好きな楽章です。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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