孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

王妃お抱えの天才美人宮廷画家、ヴィジェ・ルブラン。~マリー・アントワネットの生涯43。グルック:オペラ『トーリードのイフィジェニー』第4幕前半

エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン『白いサテンのパニエ入りのドレスに身を包むマリー・アントワネット王妃』(1778年)

仕切り直した王妃の肖像画

ジャン=バティスト・アンドレ・ゴーティエ=ダゴティが描いたマリー・アントワネット肖像画『盛装するマリー・アントワネット王妃』が、王に対して不敬であると、散々な評判だったことは前回取り上げました。

宮廷では、新しく王妃の肖像画を制作することにし、画家として、女性画家のエリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(1755-1842)に白羽の矢を立てました。

出来た作品は、『白いサテンのパニエ入りのドレスに身を包むマリー・アントワネット王妃』

この絵の王妃は、大きなダチョウの羽のついた帽子を被り、パニエの入った白いサテンのドレスを着ています。

画面右手には、正義の偶像が刻まれた台の上、王妃の頭上のずっと高いところにルイ16世の胸像が置かれており、夫王に対する敬意が示されています。

ゴーティエ=ダゴティの絵では、王妃は右手で地球儀をおさえ、ドヤ顔で正面を見据え、まるで自分が世界の女王であるかのようでしたが、この絵では、ピンクのバラを持ち、威厳は保ちつつも視線は逸らし、あくまでも夫を立てています。

この絵は王妃らしいと評判となり、母帝マリア・テレジアに贈られ、現在はそのままウィーンの美術史美術館にあります。

マリア・テレジアも満足したようで、マリー・アントワネット宛の手紙の追伸に次のように書いています。

『追伸 あなたの大きな肖像画に大喜びしています。リーニュは似ていると言っています。でもわたしにはあなたの姿がわかれば十分で、拝見して大いに満足しています。』

ヴィジェ・ルブランはこの作品を6点複製し、1点はロシアのエカチェリーナ女帝に贈られ、1点はアメリカ独立の記念としてアメリカ合衆国議会に贈られました。しかし、現在残っているのはヴェルサイユ宮殿に2点のみです。

王妃お抱えの女流画家

ヴィジェ・ルブラン『麦藁帽子をかぶった自画像』(1782年)

ヴィジェ=ルブラン、ルブラン夫人とも呼ばれますが、以後、マリー・アントワネットお抱えの画家となり、彼女の肖像画のほとんどを描きます。

しかし彼女は、髪結い師レオナールや、モード商ベルタン嬢のような単なる〝取り巻き〟ではなく、世間からも当代最高の画家のひとりとされ、現代でも高く評価されています。

フランス革命後はフランスを逃れ、ヨーロッパ各地を転々とし、苦難を経験しつつ、86歳の天寿を全うしました。

美貌と才能に恵まれ、優しい人柄から人々に好かれつつ、絵筆ひとつで激動のヨーロッパを生き抜いた魅力的な人物です。

簡単にではありますが、その生涯をたどってみます。

画家の娘として生まれる

ヴィジェ・ルブラン『学校へ行くエティエンヌ』(1773年)

ルイーズ・ヴィジェ=ルブランは、1755年にパリで画家の娘として生まれました。

父のルイ・ヴィジェはなかなかに才能のある画家で、たくさんの注文をこなし、一家のくらしは中流家庭としては豊かな方でした。

母ジャンヌ・メサンは元髪結い師で、結婚とともに仕事は辞めましたが、かなりの美人でした。

3つ下に弟エティエンヌがいますが、姉弟ともに、母に似て魅力的な容姿でした。

ルイーズは絵の才能を父から、美貌を母から、うまく受け継いだといえます。

父の手ほどきもあり、画才は幼いうちから非凡でした。

ところが、優しかった父は、ルイーズが12歳のときに、魚の骨を飲み込んでしまい、胃から摘出する手術を受けましたが、予後が悪くて亡くなってしまいました。

でも、父の同業者の画家たちがルイーズの絵の勉強の後援をしてくれたおかげで、彼女はメキメキと腕を上げてゆき、肖像画家を目指すようになりました。

あっという間に広がった名声

ヴィジェ・ルブラン『オルレアン公爵夫人』(1789年)

ルイーズの母は、才色兼備の娘が自慢で、ふたりでよく散歩にでかけましたが、あるとき、侍女と散策するマリー・アントワネット王妃一行に出くわしました。

ルイーズと母はあわてて道を譲ってお辞儀をしましたが、王妃は優しく『道をお譲りくださる必要はありません。散歩を続けてください。』と気さくに声をかけました。

仕事での王妃との関りはもっと後のことですが、このときのルイーズの心に、この上なく優雅な王妃の身のこなしや足取りは強い印象を残したといいます。

ルイーズの母は、パリ中の宮殿、貴族の館、美術館に連れてゆき、ルイーズはレンブラントルーベンス、ファン・ダイク、グルーズといった巨匠の作品に触れ、模写し、その技巧を学んでゆきました。

1773年に、美貌で知られたミシェル・ド・ボンヌイユ夫人の肖像を描いたことをきっかけに、社交界にも紹介されました。

『ポンパドゥール夫人の肖像』で有名な画家ラ・トゥールや、パリで当時大人気だったオペラ作曲家グレトリとも出会い、グレトリの肖像も描いています。

さすが世界のモードをリードするパリだけあって、またたくまに、天才女流画家の評判は広がり、エカチェリーナ女帝の愛人で、その夫ピョートル3世を暗殺したことで悪名高いオルロフ伯爵からも肖像画を依頼されました。

そして、なんといっても、当時のパリの流行の発信源で、レオナールやベルタン嬢を見出したシャルトル公爵夫人(のちのオルレアン公夫人)の目に止まり、その肖像画を描きました。

それは評判となり、注文が殺到して、ルイーズは大変な売れっ子画家となっていきました。

成り行きで結婚!

母が再婚し、引っ越すと、近所にジャン・バティスト・ピエール・ルブランという画商が住んでいて、その画廊には、ありとあらゆる古典派の巨匠の作品がずらりと並んでいました。

ルブラン氏は、ルイーズの才能に惚れたのか、下心なのか、彼女を気前よく画廊に招き入れ、作品を模写させたり、貸したりしました。

そして、半年後にルイーズに求婚しますが、彼女は彼にそのような恩を蒙っていたため、断りきれませんでした。

20歳にして多くの注文をさばかねばならず、仕事が大変で、結婚どころではありません。

それに、当時は結婚したら妻の収入は夫のものになる法律でした。

さらに、貴族界をうまく立ち回って画商と言う大商いをするルブラン氏は、オシャレで洗練された物腰でしたが、金遣いが荒く、女性関係も派手でした。

若くして成功したベンチャー企業の社長のような感じでしょうか。

母は、願ってもないチャンスと結婚を勧めますが、顧客の貴族夫人からは、あんな遊び人と結婚してはいけません、と止められました。

1776年1月11日、結婚式当日となり、教会に向かう道すがらも迷っていたくらいでした。

いわゆる成り行き婚、といった感じでしたので、やはり結婚後は、夫は彼女の収入を食いつぶし、女性関係も止まりませんでしたが、彼女は仕事に没頭し、夫など眼中にない人生となりました。

傍からみると、なんで夫婦関係が続いているのだろう?と疑問に思うすれ違い夫婦はいるものですが、このカップルもそんな感じです。

彼女は、創作の世界では自分を主体とするためか、結婚後も旧姓ヴィジェを残し、ヴィジェ=ルブランと称したのです。

ただ、このルブラン氏、本業の絵の鑑定眼は確かで、当時全く無名だったフェルメールを見出し、世に出したのは彼なのです。

そんな彼女に、いよいよフランス宮廷からお声がかかることになります。

 

続きは次回にして、いよいよクライマックスの『トーリードのイフィジェニー』を聴いてゆきましょう。

 

『トーリードのイフィジェニー』登場人物

ギリシャ語表記、()内はフランス語読み

イピゲネイア(イフィジェニー):アルテミス神殿の女祭司長、ミケーネ王アガメムノンと王妃クリュタイムネストラの娘

オレステス(オレスト):イピゲネイアの弟、アルゴスとミケーネの王

ピュラデス(ピラド)オレステスの親友

トアス:タウリス(トーリード)の王

アルテミス(ディアーヌ):狩りと月の女神

グルック:オペラ『トーリードのイフィジェニー(タウリスのイピゲネイア)』(全4幕)第4幕前半

Christoph Willibald Gluck:Iphigénie en Tauride, Wq.46, Act 3

演奏:マルク・ミンコフス(指揮)ミレイユ・ドランシュア(ソプラノ:イピゲネイア)、サイモン・キーンリーサイド(オレステスバリトン)、ヤン・ブーロン(ピュラデス:テノール)、ロラン・ナウリ(トアス:テノール)、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル(オーケストラと合唱団)【1999年録音】

注)音楽はハイライトのみの抜粋です。

1900 年夏、南仏オランジュ古代ローマ劇場でイピゲネイアを演じる伝説の歌手、ジェーン・ハットー

アルテミス(ディアーヌ)の神殿の中。壇の上にアルテミスの像があり、脇に生けにえの祭壇がある。

第37曲 レシタティフとエール(アリア)

イピゲネイアが神像の下にひとりでいる。

イピゲネイア

いいえ、この恐ろしい責務を果たすことはできないわ

このギリシャ人のために、

わたしに神が語りかけてくる

わたしの心をためらわせる、

この恐ろしい生けにえの儀式を、

いいえ、わたしは受け入れることはできません!

(エール)

情け容赦のない女神よ!

お願いですから、

わたしの心の奥に残忍さをください

人間のうめき声、

悲痛な声を、

消し去ってください!

ああ!

わたしの運命はなんと過酷なのでしょう

血にまみれた役目の、

意に沿わない犠牲者になるとは!

わたしは従います!

でも、わたしの心は良心に苛まれています

第4幕はいよいよ、生けにえが捧げられるアルテミスの神殿です。儀式を前に、ひとりアルテミス神像の前に佇むイピゲネイア。

その神像は、母殺しの罪を犯し、復讐の女神につきまとわれたオレステスが、どうすれば罪を償えるのか、神託の神アポロンに祈ったところ、『タウリス(トーリード)で祀られているにアルテミスの神像をギリシャに持ってくれば、罪は清められる』というお告げを受けたものです。

オレステスは、親友ピュラデスとともに、遠くタウリスを目指して船出し、難破してタウリスに漂着したのですが、当地の原住民スキタイ人に捕らえられ、逆にその神像に生けにえに捧げられることになってしまったわけです。

音楽は幕開けとともに、アルテミス神殿の威容を現します。イピゲネイアは、なぜか愛着を感じる捕虜の生けにえにどうしても気が進みません。

心は高ぶり、自分を救ってくれ、長く仕えてきたアルテミス神を責めるところまできます。なぜ生けにえなど求められるのですか…?しかし、敬虔な彼女は、人智の及ばない、絶対的な神の意思に従うべく、無理に心を鼓舞します。音楽は勇ましくその気持ちをなぞります。

第38曲 合唱

女祭司たちがオレステスとともに登場する。

女祭司たち

ああ、アルテミスよ

わたしたちをお憐れみください

犠牲の準備はととのい、

生けにえとして捧げられるでしょう!

血が流され、

わたしたちの涙は、

あなたの正義を満足させるでしょう

イピゲネイアの葛藤をよそに、いよいよ、生けにえの儀式が始まってしまいます。女祭司たちが、しずしずと入場し、犠牲者オレステスを連れてきます。音楽は沈鬱な中に高貴な感情を宿し、聖なる儀式の雰囲気を醸し出しています。

第39曲 レシタティフ

イピゲネイア

力が抜ける…

ああ、苦しみの時!

オレステス

長い苦しみが終わる、幸せの時!

神々よ、

あなたがたの復讐は終わります!

イピゲネイア

ああ!

オレステス

(イピゲネイアに)

あなたの目に流れる涙を乾かしてください

わたしの運命を悲しまないで

死はわたしの望むところです!

さあ、刺してください

イピゲネイア

ああ!

この恐るべき徳を、

わたしの目から隠してください!

神々はあなたの命を守っていました

それなのに、あなたは死ぬ

しかもそれをあなたは望んでいる!

オレステス

わたしは神々の必要な義務を果たすのです

わたしの命を延ばすのは、

あなたの罪になるのです!

イピゲネイア

罪?

ああ!

それはあなたを死に追いやる理由!

イピゲネイアとオレステスの運命的な対話が、グルックのドラマチックな伴奏ではじまります。自分の恐ろしい役目に煩悶するイピゲネイアと、死で自分の苦しみが終わることを喜ぶオレステス。生きる悲しみと死ぬ喜び。自然界と矛盾した逆の組み合わせが、人間にしかない感情の複雑さを示します。古代ギリシャ悲劇の肝となるテーマです。

生けにえの儀式に臨むイピゲネイア(ポンペイ古代ローマの壁画)
第40曲 レシタティフ

オレステス

わたしの心を動かす、

このひとの悲しみは、

なんと崇高なのだろう!

わたしの苦しみが和らげられるようだ!

運命のときから、ああ!

ずいぶん昔から、

わたしの不幸に涙を流したひとはいなかった

イピゲネイア

ああ!

誰とも知れぬ異国の女祭司長、しかも自分を殺す役目の人が、なぜ自分に同情して、涙まで流すのか、オレステスには意味が分かりません。しかし、生きても地獄、死んでも地獄、という身の彼は、その涙に心打たれます。感動して歌う、レシタティフというより小さなエールです。

第41曲 讃歌

女祭司たちはオレステスを取り囲み、彼を祭壇に連れてゆき、彼に巻き紐と花飾りをつける。

女祭司たち

清らかなラトナの娘よ、

わたしたちの歌に耳を傾けてください!

わたしたちの祈り、わたしたちの香が、

あなたの玉座まで昇っていきますように

天においても地においても

すべてがあなたの掟のもとにありますように

エレボスが閉じ込めたすべてのものが、

あなたの名のもとで青ざめます!

平和な時も戦さの時も、

すべての時、あなたの意思が求められます

そして、この地で讃えられている、

たったひとつの儀式を捧げます

オレステスは花飾りをつけると、祭壇の後ろに連れていかれる。彼の周りで香が焚かれ、彼は頭に神酒をかけ清められる)

生けにえの儀式が始まり、女祭司たちは処女神アルテミスを讃える讃歌を歌います。ラトナ、はローマ神話の女神の名で、ギリシャ神話ではレトにあたります。レトは、大神ゼウス(ジュピター)に愛され、ゼウスの正妃ヘラの妨害に遭いながら、苦難の末にアルテミスとアポロンの兄妹神を産みます。好色なゼウスの多数の子の中でも、特に尊いとされる太陽神アポロンと月の女神アルテミスを生んだことで、レトはゼウスの相手の中では特に崇拝され、ヴェルサイユ宮殿の庭園には「ラトナの泉」があります。

この賛歌はグルックの他のオペラ『フィレモンとバウシス』から取られ、その聖なる響きから英国国教会の賛歌にも使われました。

「エレボス」は地獄の神で、世の禍々しいものを地下世界に閉じ込めました。そのような邪悪な脅威も、アルテミス女神の前では力を失う、と讃えます。

ヴェルサイユ宮殿のラトナの泉

ウィリアム・ヘンリー・ラインハート作『レトと子供たち、アポロンとアルテミス』(1874年)
第42曲 レシタティフ

イピゲネイア

何という時!

力ある神々よ、

わたしをお救いください

4人の女祭司たち

(祭壇の方へイピゲネイアの手を引いて)

最高の女祭司よ、

お近づきになり、

尊いお役目を果たしてください!

イピゲネイア

(祭壇の方へ重い足取りで歩いてゆき)

残酷な人たちよ、やめなさい

わたしの弱さを敬いなさい!

(ひとりの女祭司がイピゲネイアに聖なる刀を差しだす)

神々よ!

わたしのすべての血が、

胸の中で凍りつく…

震えます…

そしてもっと臆病な、

わたしの腕が…

女祭司たち

刺してください!

オレステス

イピゲネイア、

愛すべき姉よ!

あなたもオーリードでこうして犠牲になったのだ

イピゲネイア

わたしの弟…?

死にそう…

女祭司たち

オレステス!?

わたしたちの王!

オレステス

どうしたのだろう?

イピゲネイア

わたしは弟を犠牲にしようとしていたの…?

オレステス

ここはどこだ?

イピゲネイア

オレステス

オレステス

なんと不思議なことだろう?

イピゲネイア

ああ、わたしの愛しい弟!

オレステス

イピゲネイア?

ああ!

あなたなのですか?

女祭司たち

そうです

アルテミスの怒りから父親を、

そしてギリシャを救ったひとです!

そう、イピゲネイアです!

イピゲネイア

ああ、わたしの弟!

オレステス

ああ、わが姉よ!

そう、確かにあなたです!

わたしの心がそう証明しています!

イピゲネイア

ああ、わたしの弟!

ああ、わたしの愛しいオレステス

オレステス

なんということ、

わたしを愛せるのですか?

憎くはないのですか?

いよいよ、イピゲネイアの手に刀が渡され、生けにえの心臓を貫くよう促されます。古代ギリシャ伝説では、女祭司長イピゲネイアの役目は生けにえに神酒をふりかけて清めることで、実際に手を下すのは他の人なのですが、ここでは劇的にするため、イピゲネイア自身が殺すことになっています。

死を前にしたオレステスは、昔、姉イピゲネイアもこうして生けにえになったのだ…とつぶやきます。

この言葉を聞いたイピゲネイアは、この犠牲者が、幼い頃に生き別れた弟オレステスであることを悟ります。これまで抱いていた、理由の分からない愛着は、肉親の愛だったのです。

姉がとうの昔に生けにえになったと思っていたオレステスも、しばらく訳が分かりませんでしたが、女祭司たちに事実を伝えられ、目の前の人がイピゲネイアであることを確信します。

オレステスは父アガメムノン亡きいま、故国は追われていますが、ミケーネの王であり、女祭司たちにとっても主君にあたるのです。

グルックの音楽は、この劇的な対話の感動を、余すところなく表現しています。

第43曲 レシタティフ

イピゲネイア

ああ!

その不幸な思い出は忘れましょう

このあまりに大きな幸せを感じさせてください!

ずっと、会えない間、

心の中であなたを思っていました

わたしは天と世界で、

弟を探していました!

あなたはここにいます!

わたしの腕の中にいます!

あれ、どうしたのでしょう?

(ひとりのギリシャの女が走りながら登場)

ギリシャの女

大変です!

秘密はすべて知られました!

トアス王がやってきます

捕虜のひとりがあなたに救われ、

遠く逃げたことが王の知るところになりました!

怒った王が、

もうひとりの捕虜をすぐに生けにえに捧げようとやってきます

女祭司たち

神々よ!

わたしたちをお救いください!

イピゲネイア

彼にこの憎むべき、

不道徳な生けにえの儀式はさせません!

あなた方はトアスの恐怖から、

あなた方の王を救いなさい!

彼には神々の血が流れ、

彼の命は神々に守られるでしょう!

オレステスは、死んだと思っていた姉との再会に喜ぶ一方、母を殺した自分を許してもらえるのか心配しますが、イピゲネイアは、済んでしまったこと、と水に流し、弟を受け入れ、喜びに浸ります。

その嬉しさもつかの間、ひとりのギリシャ人が飛び込んできて、イピゲネイアがピュラデスを逃がしたことが、この地を支配するトアス王に伝わり、王が激怒して、残りの生けにえを執行するよう、ここにやってきます、と告げます。

女祭司たちはその報にうろたえますが、イピゲネイアは動ぜず、皆でわれらの王を守りましょう、神々が助けてくれます、と呼びかけます。

 

次回、トアス王が兵を連れて乱入してきます。

 

グルック:トーリードのイフィジェニー 全曲

グルック:トーリードのイフィジェニー 全曲

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今回もお読みいただき、ありがとうございました。

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