前回取り上げたモーツァルトの〝小ト短調〟と必ず明・暗のカップリングにされるのがこのシンフォニー 第29番 イ長調 K.201(186a)です。
有名な小ト短調とセットということもありますが、この時期のモーツァルトのシンフォニーの中でも特に優れ、人気のある曲です。
モーツァルトも自信をもっていたようで、約10年後、ザルツブルクを飛び出してウィーンで活躍を始めたとき、父に手紙で〝小ト短調〟とこの曲、そしてシンフォニー第24番 K.182(173dA)、セレナード K.204(213a)の抜粋によるシンフォニーの計4曲を〝出来る限り急いで〟送ってくれるよう頼んでいるのです。
華やかさはありませんが、とても愛らしく、かつ中身の濃いシンフォニーです。
W.A.Mozart : Symphony no.29 in A major, K.201 (186a)
演奏:クリストファー・ホグウッド指揮アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック
Christopher Hogwood & Academy of Ancient Music
なんとも不思議な、弱音の語りで始まり、それが2度目には1拍ズレたカノンとして演奏される異例の展開です。そして一体となって走り出していき、聴く人の心をとらえていきます。展開部はあっさりとしていますが緊張をはらみ、またあの冒頭主題が戻ってきます。この頃のモーツァルトはイタリア帰りですが、けっしてそれにかぶれることなく、自分ならではのスタイルに取り込んで、むしろウィーン風を志向しています。締めくくりのコーダが凝っていて、これまでの若いモーツァルトには見られない、充実したものです。
第2楽章 アンダンテ
弱音器をつけたヴァイオリンがしっとりと歌いはじめます。少年の頃の夏の日のような懐かしさがあります。オーボエやホルンの絡みも美しく、おだやかな中に切なさを秘めた癒しの音楽です。
スキップをするようなメヌエットですが、この曲を通した雰囲気と同じで、しっとりとした趣きをもっています。
第4楽章 アレグロ・コン・スピリート
落ち着いた中にもダイナミックな広がりを見せる、素晴らしいフィナーレです。ここでの勢いの良さは、まさに若きモーツァルト!ここでも〝小ト短調〟と同じように第1楽章からの統一性が保たれ、4楽章の〝起承転結〟が整えられています。まさにモーツァルトの若き日の青春の輝きを楽しめる曲です。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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