孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

優美なロココの部屋。ヨハン・クリスティアン・バッハ~バッハの息子たち(3)

f:id:suganne:20171009202136j:plain

末子ヨハン・クリスティアン・バッハ

さむいさんのブログで取り上げていただきました。

ありがとうございます!!

こちらの記事では、ロックの世界でのバッハをご紹介されています。

すごくカッコいい! ぜひご覧ください。

やはり、バッハは時代を超越しているなぁ、と実感させていただきました。

www.zappazepp.work

さて、バッハの息子のうち、これまでご紹介した、ヴィルヘルム・フリーデマンと、カール・フィリップ・エマヌエルは前妻マリア・バルバラの子ですが、後妻のアンナ・マグダレーナからもふたりの作曲家が誕生しています。

上のヨハン・クリストフ・フリードリヒは、ビュッケブルクの宮廷楽長になったので、〝ビュッケブルクのバッハ〟と呼ばれていますが、他の息子たちに比べると、現在演奏される機会は少ないです。

有名なのは、末子でバッハ50歳のときの子、ヨハン・クリスティアン・バッハです。

J. C. バッハと略されます。

青年時代にはミラノで過ごし、後半生はロンドンで活躍したので、〝ミラノのバッハ〟または〝ロンドンのバッハ〟と呼ばれます。

クリスティアンはロンドンで、神童としての演奏旅行で訪れた幼いモーツァルトに音楽を教え、大きな影響を与えました。

クリスチャンが亡くなった時、モーツァルトは父にこう書き送っています。

『ロンドンのバッハが亡くなったのはご存知ですか?音楽界にとって大きな損失です。』

しかし、彼について父バッハは、『私のクリスティアンは馬鹿なやつだ。だからきっといつかは、世の中で成功するだろう』と言っています。

C.P.E.バッハと同じような酷評ですが、認めているともいえます。

もう、クリスティアンの曲は父バッハの理解の外の〝現代音楽〟でした。だから、時流に乗って成功するだろう、と。

自分が時代遅れと認識しながらも、近頃の音楽は浅い、と嘆いていたバッハの複雑な心境が読み取れます。

バッハは晩年、息子を連れて都会に行く機会があると、『きれいな音楽でも聴きにいくか!』と言って劇場に出かけたといいます。

内容は浅くても、耳あたりのよい娯楽的な音楽。

音楽には、芸術と娯楽の二つの顔がありますが、人を高め、人生を豊かにしてくれる芸術と、日々の生活を楽しいものにしてくれる娯楽、その境はあいまいです。

美術では、バロックのあとはロココなのですが、音楽ではバロックのあとは古典派で、ロココという言葉はなぜか使いません。

しかし、クリスティアンの音楽こそ〝ロココ音楽〟というにふさわしいと思っています。

それはスチール・ギャラン、すなわち優美な形式、と呼ばれています。

2曲、ご紹介します。

 J. C. バッハ『五重奏曲 二長調 作品22の1』

Johann Christian Bach : Quintet in D major. Op.22 no.1

演奏:トレヴァー・ピノック指揮イングリッシュ・コンサート

Trevor Pinnock & The English Concert

第1楽章アレグロ

楽器はフルート、オーボエ、ヴァイオリン、チェロとチェンバロです。こんな能天気な(失礼!)な音楽があるでしょうか?兄たちが垣間見せた激しさや情熱は微塵もありません。ただただ優美に、曲線を強調したロココの装飾が部屋の空気にほどこされているように感じます。フラゴナールの絵そのものです。しかし、この音楽に身をゆだねると、温かいお風呂に入っているように、頭から雑念が消え、ホッとするのです。

第2楽章アンダンティーノ

ヴァイオリンが可愛くピチカートを奏でる上に、フルートが鄙びたメロディを歌い、まるで、気だるい午後のような空気に包まれます。ロンドンのアフタヌーンティー・・・というより、お昼寝の時間が来たような感じです。

第3楽章アレグロ・アッサイ

やや早めな楽章ですが、緊張感はなく、引き続き優美なメロディが続きます。しかし、チェンバロの活躍や、フーガ風のフレーズにはハッとさせられ、やはり大バッハの息子、血は争えない・・・と思わせる、私の大好きな楽章です。

J. C. バッハ『六重奏曲 ハ長調

Johann Christian Bach : Sextet in C major

演奏:トレヴァー・ピノック指揮イングリッシュ・コンサート

Trevor Pinnock & The English Concert

第1楽章アレグロ

楽器は、オーボエ、2つのホルン、ヴァイオリン、チェロとフォルテピアノです。C. バッハは、ヘンデル没後のロンドンで最も存在感のある作曲家でしたが、この大都市に新しい楽器ピアノを広めることに努めました。英国で初めてコンサートでピアノを弾いた作曲家といわれ、出版した楽譜に『ピアノフォルテ』を指定したのも初めてでした、それまでは、鍵盤楽器の曲はチェンバロで弾いてもピアノで弾いてもよかったのです。ドイツでは鍵盤楽器をまとめて〝クラヴィーア〟と呼んでいて、特に区別はありませんでした。

この曲は長らく兄ヨハン・クリストフ・フリードリヒの作とされてきましたが、戦後、クリスティアンのものと分かりました。なんといってもピアノの活躍が聴きどころです。

幼いモーツァルトは、クリスティアンからダイレクトにピアノの洗礼を受け、〝自分の楽器〟として、あの素晴らしいピアノ・コンチェルトを生み出すのです。

モーツァルト大バッハの孫弟子といっていいでしょう。

www.classic-suganne.com

大バッハの息子の音楽を聴いてきましたが、親子だというのに、音楽の違いに驚かされます。18世紀は、社会が近世から近代へ大きく変わった時期でしたが、そんな歴史の転換が親子の音楽の違いに現れているようで、とても興味深いと思います。

それにしても、偉大な父に持ち上げられた結果、逆に押しつぶされてしまった息子。父とは全く違う道を歩んで成功した息子。

親子の人間模様は、バッハ家でも、現代でも様々だと、音楽を通じてしみじみと実感するのです。

 

ポチッとよろしくお願いします!


にほんブログ村


クラシックランキング