引き続きヴィヴァルディです。
“コンチェルト・コン・モルティ・ストロメンティ”
なにやら美味しそうなネーミングですが、訳すと“多数の楽器のための協奏曲”という味もそっけもない意味です。
しかし、その名の通り、多くのソロ楽器が次々に飛び出すなんとも個性的なコンチェルトです。
個性的な楽器たち
そのソロ楽器は、リコーダー、シャリュモー、マンドリン、テオルボ、特別なヴァイオリン(トロンバ・マリーナ?)、チェロの6つが、それぞれ2つ登場します。
リコーダーは、今では小学生専用の楽器のようですが、もともとはかなり古い古楽器です。ドイツでは、“ブロックフレーテ”と呼ばれ、バッハやヘンデルの曲でも大活躍する、当時メインの楽器です。
ただ、音量が小さいのと、表現の幅が狭いということで(強弱のつけられないチェンバロと一緒で、演奏者の腕次第ではかなりの表現ができるものの)、いったんオーケストラからは外されてしまいました。
シャリュモーはクラリネットの前身です。今でもクラリネットのあの柔らかい低音はこの楽器に由来するということで、特に“シャリュモー”と呼ばれるそうです。
テオルボは、これも古楽器で、マンドリンやギターよりも弦の数の多い、指でつま弾く弦楽器、リュートの一種です。リュートは日本の琵琶と起源を一にするともいわれている古い楽器ですが、これも音が小さく、また調弦が大変ということでいったん廃れました。
話が突然変わるようですが、私が今住んでいる住宅地は、ジブリ映画『耳をすませば』のモデルになったところで、休日にはたくさんの聖地巡礼の“お客様”をお見かけします。何の変哲もない普通の住宅地なので、わざわざ来られてなんだか申し訳ない気になりますが。
その『耳をすませば』の印象的なシーンで、雫が聖司君のおじいさんの家を訪ね、聖司君のヴァイオリンの伴奏で『カントリーロード』を歌う羽目になったとき、途中で乱入?してきたおじいさんとその仲間たちが弾いていたのが古楽器たちです。
その中にリュート弾きがいました。
この曲は、そんな楽しい風景も彷彿としてくる作品で、学芸会で生徒が演奏しているような素朴な雰囲気も素敵です。
演奏は、前回ご紹介した、下記のピノックのものがやはりスタンダードです。
多楽器のための協奏曲ハ長調 RV558『コン・モルティ・ストロメンティ』
Concerto in C major RV558 “con molti stromenti”
演奏:トレヴァー・ピノック(指揮)、サイモン・スタンデイジ(独奏)イングリッシュ・コンサート
Trevor Pinnock, Simon Standage & The English Concert
楽しいリズムに乗って、前述の6種の楽器が次々に登場し、名人芸を披露します。おそらく、貴人をもてなすための贅沢な趣向だったと思われますが、手を打って愉しむ聴衆が目に浮かびます。
第2楽章 アンダンテ・モルト
ちょっと一休み、という趣きの楽章で、多種の楽器は登場せず、一息つきます。
リトルネッロの繰り返しの合間に、ソロ楽器たちが再び、多彩な音色を披露します。耳で楽しむご馳走といえるでしょう。
また、下記もテンポがよくて楽しい演奏です。
演奏:ジョヴァンニ・アントニーニ(指揮)イル・ジャルディーノ・アルモニコ
Giovanni Antonini & Il Giardino Armonico
第2楽章 アンダンテ・モルト
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
にほんブログ村