孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

狂おしき少年の思春期。モーツァルト:オペラ『フィガロの結婚』あらすじと対訳(5)『自分で自分が分からない』

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ドロットニングホルム宮廷劇場

フィガロの結婚』第1幕第5

マルチェリーナとの言い争いには勝ったものの、スザンナはムカつきが収まらず、プンプンしながらひとり仕事をしています。

そこに、ケルビーノが飛び込んできます。

ケルビーノは伯爵の小姓で、思春期の少年。小柄な女性が男装して演じるズボン役です。

レチタティーヴォ

ケルビーノ

スザンナ、君かい?

スザンナ

そうよ、何か用?

ケルビーノ

大変なことになったんだよ~

スザンナ

どうしたの?

ケルビーノ

きのう、バルバリーナとふたりでいるところを伯爵に見つかって、クビにされちゃったんだ

奥方さまに取りなしていただかないと、君にも逢えなくなっちゃうんだよ!

僕のスザンナ!

スザンナ

私に逢えなくなる?

それはどういたしまして

じゃあ、あんたはもう奥方さまに対して、ひそかにため息をつくのは止めたってわけ?

ケルビーノ

ああ、あの方は恐れ多くて・・・

君はいいなぁ、いつでもあの方に逢えるし、朝は服をお着せして、夜にはお脱がせし、ピンやリボンをほどいて・・・

もしぼくが君の役ならなぁ…。

スザンナ(からかって)

これがあのお美しい方のおリボンと夜のお帽子でございますわよ~

ケルビーノ(スザンナの手からリボンを奪い取る)

もらった!

スザンナ

あっ!返して!

ケルビーノ(逃げ回る)

ああ、いとしく、美しく、幸せなリボン! 命かけても返さないよ!

スザンナ

ちょっと、いい加減にして!

ケルビーノ

まあ、そう怒らないで。代わりにぼくの作ったこの歌をあげるから。

スザンナ

これをどうしろと?

ケルビーノ

奥方さまに読んで差し上げて

君も読んで

それから、バルバリーナにも、マルチェリーナにも、お屋敷中の女の人ぜんぶに読んであげて!

スザンナ

かわいそうなケルビーノ、あんた気が変なのね? 

第6曲 ケルビーノのアリア『自分で自分がわからない』

ケルビーノ

もうぼくは、自分で自分が分からない

燃えたかと思うと、すぐ冷めたり、女を見るたびに顔が赤くなり、女を見るたびに胸が高鳴る

恋とか、愛とかいう言葉を聞いただけで胸が騒ぎ、自分でもわからない想いが胸を焦がす

覚めれば恋を語り、寝ては夢に恋を語る

水にも、影にも、山にも、花にも、草にも、泉にも、そして、ぼくの言葉を運んでくれるこだまや、空気や、風にも・・・

だれも聞いてくれない時でも、ぼくは独りで恋を語る

思春期まっさかりのケルビーノは、女性の魅力に敏感になり、恋に恋して、自分を受け入れてくれるなら誰でもいい、という状態です。このアリアは、そんな半分錯乱したような少年の心を見事に歌っています。第2幕で歌われる、有名な『恋とはどんなものかしら』は、伯爵夫人の前でかしこまって歌うのですが、スザンナの前では自分をさらけ出しているのです。

スザンナは、やれやれ、といった調子で聴いてあげています。

ところが歌が終わったとたん、ケルビーノは『もうダメだ!』と叫びます。

伯爵が突然部屋に入ってきたのです。

さてどうなるか、それは次回に。

 

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

 

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