孤独のクラシック ~私のおすすめ~

クラシックおすすめ曲のご紹介と、歴史探訪のブログです。クラシックに興味はあるけど、どの曲を聴いたらいいのか分からない、という方のお役に立ちたいです。(下のメニューは横にスライドしてください)

開かれる天国の門、迎える天使たち。ヘンデル:オラトリオ『メサイア』あらすじと対訳(8)

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ヘンデルメサイアの第2部より、イエス受難のあと、復活への希望の部分、第32曲から第36曲までを聴きます。

ヘンデルメサイア』HWV56

Handel : Messiah HWV56

エマニュエル・アイム指揮ル・コンセール・ダストレ

Emmanuelle Haim & Le Concert D’Astree

第32曲 アリア(テノール

しかし、神は彼の魂を地獄に捨て置かず

聖なる御子である彼に墓穴は見せない

(詩編 16:10)

テノールの穏やかなアリアです。これまで、十字架に架けられるイエスの、凄絶な苦しみを描いてきましたが、イエスの死が語られたあと、急に明るい長調に転換し、とまどいを感じます。死後のイエスの魂の居場所は地獄でも墓でもない、というのです。

第33曲 合唱

さあ、城門よ、頭を上げよ

永遠の扉よ、上がれ

栄光の王が入られる

栄光の王とは誰か?

強く、力を持った主

敵う者のいない主

万軍の主、彼こそ栄光に輝く王

 (詩編 24:7-10)

力強い合唱が、門に開門を命じます。どこの門か? 言うまでもなく、天国の門です。イエスが、栄光の王として、堂々、天国に凱旋する様を歌い上げます。そこに現れたのは、人々に蔑まれ、虐られた哀れなイエスではなく、光輝く王者の姿で、聴いているこちらも誇らしい思いになります。ちなみに、天国の門は左右ではなく、上下に開くため〝開け〟ではなく〝上がれ〟という言葉になります。

第34曲 レチタティーヴォテノール

天使といえども

誰ひとりとして

かつて神に『お前はわたしの子、今日、わたしはお前を生んだ』と言われたものがいただろうか

(へブライ人への手紙 1:5)

天国に入ったイエスは、天使たちに迎えられます。神のそば近く仕える大天使たちでさえも、神から〝わたしの子〟と呼ばれたことはない、ということで、イエス ・ キリストの地位は天使たちの上であることを示しています。

第35曲 合唱

だから、天使たちは皆、彼を礼拝するのだ

(へブライ人への手紙 1:6)

エスが天使たちから礼拝を受けるさまを現した合唱です。二重フーガで、天使たちがこぞって讃美するさまが、ありありと浮かぶ曲です。

第36曲 アリア(アルト)

彼は捕虜を連れて

いと高き天に昇る

人々と、さらには彼を信じないものに対してさえも

神と共に永遠に住まう恩寵を下さる

(詩編 68:19 / エフェソス人への手紙4:8)

もともとは、聖なる戦いに勝った王の凱旋をたたえる旧約聖書の歌、詩編からとられた歌詞ですが、ここでは、捕虜が、罪に囚われていた人々を表し、解放して天の国に連れていくことになぞらえられています。イエスの死によって、人々は永遠の神の恩寵を得ることができ、ここにメシアの救いが成就したのです。アルトによる、堂々たる宣言です。

いよいよ次回、ハレルヤ・コーラスです!

 

今回もお読みいただき、ありがとうございました。


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