ヘンデル『メサイア』の第2部より、イエス受難のあと、復活への希望の部分、第32曲から第36曲までを聴きます。
Handel : Messiah HWV56
エマニュエル・アイム指揮ル・コンセール・ダストレ
Emmanuelle Haim & Le Concert D’Astree
第32曲 アリア(テノール)
しかし、神は彼の魂を地獄に捨て置かず
聖なる御子である彼に墓穴は見せない
(詩編 16:10)
テノールの穏やかなアリアです。これまで、十字架に架けられるイエスの、凄絶な苦しみを描いてきましたが、イエスの死が語られたあと、急に明るい長調に転換し、とまどいを感じます。死後のイエスの魂の居場所は地獄でも墓でもない、というのです。
第33曲 合唱
さあ、城門よ、頭を上げよ
永遠の扉よ、上がれ
栄光の王が入られる
栄光の王とは誰か?
強く、力を持った主
敵う者のいない主
万軍の主、彼こそ栄光に輝く王
(詩編 24:7-10)
力強い合唱が、門に開門を命じます。どこの門か? 言うまでもなく、天国の門です。イエスが、栄光の王として、堂々、天国に凱旋する様を歌い上げます。そこに現れたのは、人々に蔑まれ、虐られた哀れなイエスではなく、光輝く王者の姿で、聴いているこちらも誇らしい思いになります。ちなみに、天国の門は左右ではなく、上下に開くため〝開け〟ではなく〝上がれ〟という言葉になります。
天使といえども
誰ひとりとして
かつて神に『お前はわたしの子、今日、わたしはお前を生んだ』と言われたものがいただろうか
(へブライ人への手紙 1:5)
天国に入ったイエスは、天使たちに迎えられます。神のそば近く仕える大天使たちでさえも、神から〝わたしの子〟と呼ばれたことはない、ということで、イエス ・ キリストの地位は天使たちの上であることを示しています。
第35曲 合唱
だから、天使たちは皆、彼を礼拝するのだ
(へブライ人への手紙 1:6)
イエスが天使たちから礼拝を受けるさまを現した合唱です。二重フーガで、天使たちがこぞって讃美するさまが、ありありと浮かぶ曲です。
第36曲 アリア(アルト)
彼は捕虜を連れて
いと高き天に昇る
人々と、さらには彼を信じないものに対してさえも
神と共に永遠に住まう恩寵を下さる
(詩編 68:19 / エフェソス人への手紙4:8)
もともとは、聖なる戦いに勝った王の凱旋をたたえる旧約聖書の歌、詩編からとられた歌詞ですが、ここでは、捕虜が、罪に囚われていた人々を表し、解放して天の国に連れていくことになぞらえられています。イエスの死によって、人々は永遠の神の恩寵を得ることができ、ここにメシアの救いが成就したのです。アルトによる、堂々たる宣言です。
いよいよ次回、ハレルヤ・コーラスです!
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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