パリ・シンフォニーでご紹介したCDに入っている、パリでモーツァルトが作曲した他の曲をご紹介していきます。
まず、『フルートとハープのためのコンチェルト ハ長調』。
これは、大迫力のパリ・シンフォニーとは全く対極にあるような曲で、まさにモーツァルトのイメージ通りの、優美、優雅の極みのような曲です。
フルートとハープなんて楽器の組み合わせ自体、鉄板です。
この曲は、パリで音楽好きの貴族、ド・ギーヌ公爵と知り合い、その令嬢に音楽のレッスンを行いました。公爵はフルート、令嬢はハープを得意としていたので、このふたりのために作曲したのがこの曲です。
そのため、この魅力的な楽器の組み合わせは、モーツァルトには他にありません。
フルート・コンチェルトは2曲ありますが、ハープが登場するのは残念なことにこの曲だけなのです。
大きなコンサートホールではなく、宮殿サロンでの父娘共演のためのものなので、オーケストラは控え目、ソロ・パートは繊細そのものです。
フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299(297c)
Concerto for Flute and Harp in C Major K.299(297c)
演奏:Freiburger Barockorchester & Gottfried von der Goltz
ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(指揮)フライブルク・バロックオーケストラ
高貴で典雅な響き。当時、フルートとハープはいずれも音程が不安定で、演奏は非常に難しいのですが、公爵も令嬢も腕前はトップクラスだったようです。
第2楽章 アンダンティーノ
モーツァルトの緩徐楽章の中でも白眉の存在です。
最初、静かに弦がメロディを奏で、そっとフルートがハープを伴って登場し…そこから流れ出す音楽は、まさに天上の響きとしか言いようがありません。
映画『アマデウス』でも、モーツァルトのライバル、サリエリがこの譜面を見て、おもわず楽譜を床にとり落とすシーンが印象的でした。
第3楽章 ロンド
一転、ワクワクするような楽しい音楽です。これまで優雅な感じで来たので、いきなりの颯爽とした疾走感に意表を突かれますが、モーツァルトの曲の中でも私が特に好きな楽章のひとつです。
新しいメロディが次々と惜しげもなく出てくる、本当に贅沢な曲ですが、貴族でもないのに個人で楽しめるとは、本当にいい時代に生まれたものです。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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