ヘンデル『メサイア』の第1部より、第13曲から第17曲までを聴きます。
クリスマス・イヴに草原で起きた奇蹟、有名な〝羊飼いの聖夜〟の描写です。
これまでの曲では、メシア来臨についての、旧約聖書の預言を綴ってきましたが、ここからは、新約聖書の物語、すなわち救い主としてのイエス誕生が語られます。まさにクリスマスにふさわしい場面になります。
Handel : Messiah HWV56
エマニュエル・アイム指揮ル・コンセール・ダストレ
Emmanuelle Haim & Le Concert D’Astree
第13曲 ピファ(パストラル・シンフォニー、田園交響曲)
イエス誕生の夜の奇蹟は、最初に羊の夜番をしている羊飼いたちに現れます。静かな夜の牧草地を現わすのどかな器楽曲です。コレッリのクリスマス・コンチェルトのパストラーレと同じです。今のクリスマスは真冬ですが、羊の放牧は冬はしませんので、聖書の記述からも、イエスが生まれたのが冬でないことは明らかです。12月24日の深夜0時に、寒さにふるえながらきっと来ない彼女を待つ・・・というのは何の意味もなかったのですね。
ただ、キリスト教会も、クリスマスはイエスの降誕を祝う日であって、イエスの誕生日であるとは言っていません。ふつうは誕生日その日に祝ってもらいたいものですが、神様は俗人とは違うわけです。
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羊飼いたちが、野原で数人野宿をしながら
夜通し羊の群れの番をしていた
(ルカ 2:8)
すると突然、大天使が来て
主の栄光があたり一面をまぶしく照らしたので
彼らは非常に恐れた
(ルカ 2:9)
すると大天使は言った
『恐れるな。わたしは、大いなる喜びの知らせを告げに来たのだから。今日、ダビデの町ベツレヘムで、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主、キリストである。』
(ルカ 2:10-11)
するとたちまち、天の大軍が加わり
大天使とともに神を賛美して言った
(ルカ 2:13)
第17曲 合唱
いと高きところには神に栄光が
そして地には平和が
御心にかなう人にあるように。
(ルカ 2:14)
大天使がなぜわざわざ羊飼いのところに現れたのか不思議ですが、キリスト教は牧畜業の民から発祥した宗教であり、色々な意味で、羊や羊飼いとイエスは切り離せません。
第17曲で、初めて天使が神を賛美するのに使用する楽器、トランペットが登場します。天を埋め尽くした天使たちがだんだん遠ざかり、最後にキラリ、と光って、空の彼方に消える描写が、目に浮かぶようで見事です。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。
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